巡回指導とは、トラック協会が運送会社に対して行う「法令を守って運営をしているか」どうかの確認と指導です。
まずは巡回指導当日に、トラック協会の指導員によってチェックされる項目をご紹介します。
事業計画等
帳票類の整備、報告等
運行管理等
今回解説する項目
車両管理等
労働基準法等
法定福利費等
赤文字で記載した項目は、特に重要とされる項目となります。
こちらの記事は、
トラック協会による巡回指導項目対を徹底解説!(事業計画等)
トラック協会による巡回指導項目対を徹底解説!(帳票類の整備、報告等)の続きとなります。
前回と前々回の記事では、巡回指導チェック項目の①~⑧、⑨~⑬を解説しましたので、まだお読みになっていない方は是非最初から読んでみてください。
今回の記事では、⑭~⑲の「運行管理等」についての解説を行います。
この運行管理等に関する項目は重要項目が最も多く、最重要となります。
運行管理規定とは、運行管理者の職務及び権限などを定めた書類で、運送事業者にはその作成と保管が義務付けられています。
一般貨物自動車運送事業者等は、運行管理者の職務及び権限、統括運行管理者を選任しなければならない営業所にあってはその職務及び権限並びに事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務の処理基準に関する規程(以下「運行管理規程」という。)を定めなければならない。
貨物自動車運送事業輸送安全規則 第二十一条 より引用
運行管理規定については、各運輸局やトラック協会の様式をダウンロードして使っている方が多いと思います。
それ自体は問題ないのですが、実施日や組織図が空欄のままになっている場合があるので、記入を忘れないようにしましょう。
運行管理規定は営業所にて備え付けが義務付けられている書類であるため、営業所にて保管をしておきましょう。
運行管理者とは、運転手に対する点呼や運行の管理を行う役職で、ご存じの通り営業所に最低1人以上の選任が必要となります。
運行管理者の選任は、重要項目の一つであるため必ず選任するようにしましょう。
選任届の様式は、各運輸支局のホームページにてダウンロードすることができます。
記入したら「運行管理者資格者証の写し」を添付し、各運輸支局の保安課に2部提出します。
そのうち1部は控えとして返却されますので、その運行管理者が所属する営業所にて保管をしておきましょう。
運行管理者は新たに選任された場合、選任された年の年度内(3月末まで)に運行管理者一般講習という講習の受講が必要です。
こちらの講習は、NASVA(独立行政法人自動車事故対策機構)にて受講することができます。
初めて講習を受講した後は、2年に1度のペースで引き続き一般講習の受講が必要であり、この受講に関して特段運輸局やナスバ等の受講機関から通知は届きません。
最初の年度内に受講すべき一般講習はきちんと受けている事業者さんが多いのですが、その後の2年に一度の一般講習を失念している場合が多く見受けられますので、こちらも忘れないように管理しておきましょう。
こちらは事業用自動車の数に対して、適切な人数の運転手が確保されているかをチェックする項目です。
自動車の数に対して適切な人数は何人になるかというと、基本的には事業用自動車1台に対して、運転手1人という考え方です。
しかしながら、必ずしも事業用自動車の数以上の運転手が必要かと言えばそういうわけではなく、営業所や運転者の休日の数などによって個別に判断されます。
自動車数に対する運転者の人数に不安がある場合、管轄の運輸局に問い合わせるなどして、現在の事業計画に対して運転手の数は改善の必要があるか、事前に問い合わせておくのも一つの手です。
巡回指導を行うのは運輸局ではないですが、運輸局からの意見の裏付けがあるのと無いのでは、実際に巡回指導を行うトラック協会の指導員への説得力も違います。
運送事業者は、過労運転を防ぐため、2024年に施行された改善基準告示等の基準に従い、勤務時間及び乗務時間を定める必要があります。
また、定められた勤務時間等を基に乗務割を作成し、これに従い休憩時間、睡眠時間を適正に管理する必要があります。
この乗務割を定めるにあたって気を付けなければならないのが、次の4つの時間です。
乗務割を定めるときは、これから解説する制限に気を付けて作成してください。
それぞれ、2024年に施行された改善基準告示の内容をもとにルールを解説します。
運転時間の制限は下記の通りです。
期間 | 制限 |
---|---|
1日 | 9時間まで(2日平均) |
1週間 | 44時間まで(2週間平均) |
なお、連続運転時間については原則4時間以内で、例外的にSAやPA等が満車等により駐停車できない場合に限り4時間30分まで延長可能とされています。
なお、連続運転時間とは休憩や荷待ち等の時間を除いて純粋な運転を行っている時間を言います。
拘束時間とは、休憩時間を含む出勤から退勤までの時間をいいます。
そのため、運転時間以外にも常務前の点呼や帰庫後の日報を記載する時間も含まれます。
拘束時間の制限は下記の通りです。
期間 | 制限 | 例外 |
---|---|---|
1日 |
13時間以内 |
1週間の運行が全て長距離運送(450km以上)かつ、一つの運行(勤務先を出発し、帰着するまで)における休息期間が住所地以外の場所である場合、1週につき2回に限り最大拘束時間を16時間とすることができる |
1ヶ月 | 284時間以内 | 労使協定6ヵ月時間を超えない範囲内において、1ヵ月の拘束時間を310時間まで延長することができる |
1年間 | 3,300時間以内 | 労使協定により3,400時間まで延長することができる |
先程、運転時間は2日平均で9時間までと記載しましたが、拘束時間の規定により1日の拘束時間が最大15時間と決められています。
つまり、1日目:17時間運転、2日目:1時間運転で平均9時間運転というのは、1日の拘束時間を超えているため、認められないという事です。
また、1日の最大拘束時間は15時間ですが、毎日毎日15時間拘束を続けていると、19日目で1ヶ月の拘束時間である284時間を超えてしまいます。
あくまで原則は13時間以内であるため、こちらを基準に考えるようにしましょう。
休憩時間とは、運転手が自由に過ごすことができる時間を言います。
そのため、荷待ち時間は就労のため待機しているだけであるため、休憩時間ではないとみなされます。
休憩時間については、所定労働時間(会社で定めた労働者が働く時間)が8時間を超える場合は、最低でも1時間以上確保する必要があります。
休息期間とは、簡単に言うと1日の労働が終わって、次の日の労働までの時間のことを言います。
もっと簡単に言えば仕事が終わって家でゆっくりしたり、自由に遊びに行ったりする時間です。
休息期間の制限は下記の通りです。
期間 | 制限 | 例外 |
---|---|---|
1日 | 連続9時間以上 |
1週間の運行が全て長距離運送(450km以上)かつ、一つの運行(勤務先を出発し、帰着するまで)の休息期間が住所地以外の場所である場合、1週につき2回に限り、継続8時間以上とすることができる。 |
1日の休息期間は9時間以上とされていますが、11時間以上確保することを努力義務として推奨しています。
というのも、休息期間が9時間ということは拘束時間が15時間(24時間-9時間)となってしまい、15時間拘束を続けていると先ほども記載した通り、19日目で1ヶ月の拘束時間である284時間を超えてしまいます。
そのため、はやり拘束時間13時間、休息時間11時間、合わせて24時間を目指すようにしましょう。
次の記事は、トラック協会による巡回指導項目対を徹底解説!(運行管理等)part2となります。
こちらも是非ご覧ください。