貸切バスとは、特定のグループや団体が専用で利用するためのバスのことで、基本的に1つのグループでバスを貸し切ります。
利用するグループの目的に応じて走行ルートや目的地を自由に指定することができるので、観光旅行や企業のイベント、学校の遠足、スポーツチームの移動など様々なシーンで利用されます。
昨今はコロナ明け後のインバウンド需要増加に伴って、貸切バスの需要も増加傾向にあります。
この貸切バスの事業を行う場合には、国土交通省が管轄する地方運輸局に申請をし、一般貸切旅客自動車運送事業の許可を取得する必要があります。
なお、いわゆる路線バスと呼ばれる、街中を一定のダイヤに従って、不特定多数のお客さんを乗せる事業を乗合バスといいますが、今回は割愛します。
貸切バスの許可を取得するためには、様々な条件があります。
これらの条件を満たすことの証明ができないと、貸切バスの許可は下りません。
バスを使用する事業なので、車両や駐車場は用意しなければならないのだろうと予想できますが、他にはどのような条件があるか1つずつ解説します。
まずは、事業活動の拠点である営業所が必要です。
営業所では仕事の受注や車両の管理、運転手の点呼など基本的な営業活動を行います。
営業所の建物は所有ではなく賃貸でも大丈夫ですが、賃貸の場合は使用期間が3年以上でないと営業所と認められないので、賃貸の契約を結ぶ際は注意する必要があります。
また、市街化調整区域など基本的に建築できない場所に建てられた建物は、営業所として認められないので、営業所として使用しようとしている建物が適法な状態であるかどうかも事前に確認する必要があります。
バスを停めておくための車庫は当然必要となります。
車庫と言っていますが、ガレージのような屋根がある必要はなく、青空駐車場でも問題ありません。
車庫についても賃貸の場合は、3年以上の使用期間で契約する必要があります。
また、立地条件として車庫は営業所から直線で2km以内の場所に設ける必要があります。
さらに、車庫に接する道路はバスが出入りするため、一定以上の道幅がないと車庫として認められません。
この道幅の規定について適合しているかどうかは、その道路を管理する市区町村に車両制限令による証明(地域によって名称が異なります)という申請をして確認することができます。
このように貸切バスの車庫条件はかなり厳しく設定されています。
貸切バスの許可を取得する際の最初の難関は、おそらくこれらの条件を満たす車庫を見つけることでしょう。
バスの運転手が休憩するための、休憩施設も必要となります。
通常は営業所の建物の中の一室を休憩施設とすることが多いですが、別の場所に設けることもできます。
ただし、こちらも営業所または車庫から直線で2km以内の場所に設ける必要があるので注意しましょう。
お客さんを乗せるためのバスは、最低3台以上用意する必要があります。
なお、ここでいうバスとは、乗車定員11人以上の車両を言います。
ただし、大型車を使用する場合は最低台数が5台に増えます。
ここでいう大型車とは車両の長さ9メートル以上又は旅客席数50人以上の車両を言います。
また、車両についても営業所や車庫と同じく、所有している必要はなくリースでも大丈夫です。
バス事業を行う上で、運転手を含む一定の人員が必要となります。
必要となる人員は次の通りです。
運行管理者・・・2人以上
整備管理者・・・1人以上
安全統括管理者・・・1人以上
運転手・・・台数分以上
それぞれどのような立場の方なのか解説します。
運行管理者とは、運転手の点呼を行ったり、運行ルートの管理などを行う立場の役職です。
運行管理者になるためには(公財)運行管理者試験センターが開催する運行管理者試験に合格する必要があります。
運行管理者の資格は貨物と旅客に分かれており、貸切バスの許可に必要なのは旅客のほうなので、間違えないようにしましょう。
整備管理者とは、主に車両整備に関する責任者を指します。
3級以上の自動車整備士の資格があれば整備管理者になる事ができます。
また、整備士の資格が無くてもバスの整備に関する経験(日常点検を含む)が2年以上あって、各県の運輸支局が開催する整備管理者選任前研修を受講した方も整備管理者になる事ができます。
安全統括管理者とは、運行管理者や整備管理者を統括する責任者です。
誰でもなれるかというとそうではなく、バス事業での運行管理者または整備管理者の経験が3年以上あり、これから許可申請をする会社において事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にあることが必要です。
この事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位というのがどのような立場なのかは、明確な記載がありませんが、単なる運転手という立場ではダメで、役員クラスの管理職でないといけません。
なお、役員の登記まで求められるかどうかは地域によって異なりますので、許可を検討されている方は事前に管轄の運輸支局に問い合わせるのが良いでしょう。
運転手は、バスの台数分必要となります。
大型車を含まない場合は3人以上、大型車を含む場合は5人以上必要です。
また、運転手は人を乗せる仕事であるため、2種免許が必要となります。
貸切バスの事業を継続できるだけの資金力があることも条件となります。
どれだけの資金があることを証明するのかというと、次に掲げる項目の合計額の半分です。
項目 | 備考 |
---|---|
車 両 費 | 購入費用(リースの場合は1年分のリース料) |
営業所の建物 | 購入費用(賃貸の場合は1年分の賃借料及び敷金等) |
車庫の土地 | 購入費用(賃貸の場合は1年分の賃借料及び敷金等) |
器具、工具什器、備品等 | 購入費用 |
人 件 費 | 役員報酬や給与、社会保険料を含む2ヶ月分 |
燃料油脂費及び修繕費 | それぞれ2ヶ月分 |
保 険 料 | 自賠責保険・自動車任意保険の1年分 |
各 種 税 | 自動車税・自動車重量税の1年分、環境性能割及び登録免許税等 |
創業費等開業に要する費用 | 全額 |
証明する目安金額は1000万くらいですが、車両の種類や台数、運転手の数によってかなり前後するので、事業計画がしっかり決まったら一度計算してみると良いでしょう。
業務 |
料金(税込み) |
---|---|
新規許可 |
550,000円 |
更新許可 | 550,000円 |
営業所変更認可 |
220,000円~ |
車庫変更認可 |
165,000円 |
商号・本店・役員変更届 |
22,000円 |
増減車届 |
33,000円 |
※新規許可の場合、登録免許税として別途90,000円必要となります。