運送業許可取得のために必要な資金条件について解説
運送業新規許可取得のために必要となる資金は約1500万円~2500万円と言われています。
しかし、この金額は許可を取得する事業者の事業内容によって大きく変動があります。

運送業許可取得のために必要な資金条件について解説

相談者様

 

運送業の許可は取得までどのくらい資金が必要なのでしょうか?

行政書士

 

約1500万円~2500万円必要といわれておりますが、事業者様によって大きく異なります。

相談者様

 

結構かかるんですね、どうしてそんなに幅があるのですか?

行政書士

 

この金額は許可申請をする運送会社の、当面の運転資金を計算して算出されるからです。

相談者様

 

何か算出の目安はないでしょうか?

行政書士

 

ざっくり言うと、1500万円+車両費が目安となりますが、正直状況をお伺いして計算してみないと正確な数字は分からないですね。

 

 

運送業の許可取得の要件

運送業の許可を取得するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。

 

この満たさなければならない条件を「要件」といい、大きく分けると「人員の要件」「設備の要件」「資金の要件」があります。

 

この記事では運送業許可取得のために必要な資金について、つまり「資金の要件」について具体的な内訳を交えて解説していきます。

 

 

必要資金を法人の口座に確保する

運送業許可の申請をする際には、残高証明書という申請しようとする運送会社の銀行口座の残高を表す書類を提出しなければならなりません。

 

その残高証明書の金額が1500万円~2500万円必要となる訳です。
さらに、その金額を申請から許可までの約5ヶ月間常に確保していなければならないという条件がついています。

 

申請から許可までの期間ということは、当然まだ運送業ができない状態です。

 

そんな中5ヶ月間もの間、何千万という資金をプールしなければならないわけですから、なかなか難しい条件であることがお分かりいただけると思います。

 

必要となる資金の内訳

ここからは、その残高証明書の金額である、当面の運転資金の内訳を具体的に解説していきます。

 

人件費

役員報酬や運転手等の従業員の給料・賞与・手当を6ヶ月分計上します。

 

さらに、法定福利費として従業員の健康保険料や雇用労災保険料を計上し、福利厚生費として給与、手当、賞与の合計額の2%を見込んで計上します。

 

例として、役員が2人、運転手5人(整備管理者兼任)、運行管理者1人として考えると、人件費だけで1100万円~1300万円程度になります。

 

燃料費・油脂費

トラック全台分の6ヶ月分のガソリン代を計上します。

 

5台スタートで、1日100km走るとすると、(100km×30日×6ヶ月)÷4.0km/ℓ×130円(軽油)=2,925,000円となります。

 

油脂費として、燃料費の2%を見込んで計上するので、2,925,000円×0.02=58,500円。
合計でおおよそ300万円前後見ておく必要があるという事ですね。

 

修繕費

6ヶ月分の修繕費やタイヤチューブ代を計上します。
特に計算式があるわけではないのですが、200万円前後を見ておく必要があります。

 

車両費

車両を購入した場合は、その車両の購入費を計上します。
リースやローンの場合は、月々の支払額を1年分計上する必要があります。

 

つまり、5台全て自社所有であれば車両費の項目は0円になります。

 

施設購入・使用料

営業所、車庫の購入費または使用料を計上します。
物件を購入する場合は、そのまま上乗せされるので、大幅に必要な資金が増えます。

 

賃貸の場合は、賃料1年分を計上します。
ここも、所有物件などで賃貸がかからない場合は0円になります。

 

器具、工具什器、備品等

事務所の設備や備品などに必要な費用を計上します。
金額が少ないのであまり気にする必要はありません。

 

保険料

自賠責保険、自動車任意保険料の1年分を計上します。
任意保険の等級や補償内容によって金額が大きく異なりますが、100万円~200万円程度見ておく必要があります。

 

税金

自動車税及び自動車重量税の1年分、環境性能割といった税金を計上する必要があります。
車両の規格にもよりますが、50万円~100万円程度見ておく必要があります。

 

以上のような経費を合算して1500万円なり2000万円という数字が決まるので、当然その運送会社の荷物や車両の種類によって金額が変わります。

 

たとえば2tトラックで地場をメインとして仕事をする方と、大型トラックで長距離メインで仕事をする方では月々にかかる経費が全く違います。

 

おおよその目安

ここまでの内訳をもとにおおよその目安を出すとすると次のようになります。

 

車両リース代なしで事務所車庫が自社所有であれば、1500万円~2000万円前後。
車両のリースの残債があり、事務所車庫賃貸の場合で、2000万円~2500万円前後。
さらに車両が大型車でかつ、新車リースの場合は3000万円以上という感覚です。

 

しかし、この金額もあくまで感覚であり、正確に計算してみないことにはわからないということはご了承ください。

 

売掛金がある場合は資金を抑えることが出来る

ここで裏ワザとまでは言いませんが、あまり知られていない残高証明書の金額を抑えるテクニックをお伝えします。

 

実は既に事業を行っていて、常に月々の売掛金が発生している場合は、その売掛金を資金として組み込むことが出来る場合があります。

 

たとえば建設会社さんが運送業許可を取得するような場合で、月々の売掛金が平均して500万円あるとします。

 

今回必要な資金が1500万円であった場合、売掛金500万円を差し引いて、法人の銀行口座に準備しておくお金は1000万円で済むという事です。

 

このように売掛金が常にある場合は、(売掛金の金額)+(法人の口座残高)=許可取得に必要な資金として考えることができるわけです。