運送業の許可を取得するためには、どのような設備が必要ですか?
営業所や車庫、車両などの設備が必要です。
なるほど、車両は1台あればよいのでしょうか?
いいえ、車両については5台確保する必要があります。そのほかにも様々な決まりがあるので解説します。
運送業の許可を取得するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
この満たさなければならない条件を「要件」といい、大きく分けると「人員の要件」「設備の要件」「資金の要件」があります。
今回は、3つのうちの「設備の要件」について解説するわけですが、必要な設備は次の4つです。
それでは、これら4つの設備要件について一つずつ解説します。
まず初めに考えることは、今ある施設を流用するか新しく物件を借りるかという事です。
今ある施設を流用するというのは、例えば自宅や実家の一室を営業所とする場合や、既に他の事業をやっていてその事務所を営業所とするような場合です。
今ある施設を使用するにしても、新しく物件を借りるにしても、注意すべき点は一つです。
それは“その建物が営業所として登録できる場所であるか”という事です。
世の中の建物は、営業所として使用して良い建物と使用してはいけない建物に分かれています。
どのように分かれているかというと、用途地域という規定によって分かれています。
用途地域はその建物がある都市の市役所に問い合わせることで簡単に調べることができます。
そして肝心の営業所として登録ができる用途地域は次の通りです。
逆に営業所として登録することが難しい用途地域は次の通りです。
このように運送業の営業所として登録できる用途地域は法律で決められています。
「物件を契約したはいいものの、登録できない用途地域だった」ということがないよう、初めによく調べておきましょう。
なお運送業の営業所について、広さに関する決まりはなく、一般的な事務作業ができる広さ・設備があれば良いという事になっています。
続いて休憩施設についてですが、これは営業所と同じ考え方で良いと思います。
どういうことかというと、一般的に休憩施設というのは営業所と同じ建物に設けます。
同じ建物内で別の部屋に設けたり、営業所の一部をパーティションで分けたりして確保するのが一般的です。
つまり、運送業の営業所が確保できれば休憩施設も確保できたのと同然という事です。
休憩施設についても広さの制限はなく、常識的に休憩できるスペースが確保されていれば良いという事になります。
おそらく運送業の施設要件の中で一番苦労するのが、車庫(駐車場)の要件です。
車庫については、営業所や休憩施設と違い、いくつか気を付けなければならない点があり、次の3つです。
それぞれ分けて解説します。
これは当然と言えば当然ですが、運送業で使用するトラックが全て収容できる広さの車庫でないといけません。
営業所や休憩施設には広さの規定はありませんでしたが、車庫にはあるという事です。
なお、この車庫の広さについては、計算上収容できればいいというわけではなく、実際に緑ナンバー車両すべてが駐車できるスペースを確保する必要があります。
次は立地に関する制限です。
運送業の車庫は原則として営業所に併設されている必要があり、例外として営業所から離れていてもいいですが一定の距離内にある必要があります。
この一定の距離というのは、地域によって数字が異なり、中部地方では直線距離で10kmとされています。
地域によってはこの距離が5kmだったり、20kmだったりします。
ということで車庫は営業所からあまり遠くの場所に設けることはできません。
これも運送業の車庫を探すのが難しい理由の一つです。
そのため、順番としてまず車庫の場所を確定させてから、営業所・休憩施設を探すというのが良いでしょう。
最後は車庫の目の前の道路幅に関する制限です。
一般的な乗用車の駐車場に関しては、特段道路幅に関する制限はないのですが、運送業の車庫となるとこのような制限が発生します。
簡単にいうと、車庫の目の前の道路は“駐車するトラックが安全にすれ違う事ができる広さ”が必要です。
具体的には、駐車するトラックの大きさにもよりますが5.0m~6.0mは必要だと考えていただければよいかと思います。
この道路幅に関する制限については、運送業の許可申請前に予めその道路の管理者に申請を行う事で、制限内であるかどうかを証明してもらう事ができます。
そのため車庫の候補地が決まったら、広さと営業所の距離を調べた後、道路管理者へ道路幅の申請をして、最終的に運送業の車庫として登録が可能な場所であるかの判断を行います。
最後の施設要件が車両、つまりトラックに関する要件です。
車両は最低5台必要となりまして、軽自動車以外で用途が「貨物」もしくは「特種」であることが条件です。
ただ、許可申請時点で既に手元に車両がある必要はなく、注文書やリース契約書などを用意することで、確保できているとみなすことができます。
そして最初から5台ともトラックを用意することができる方は稀ですので、最初はトラック2台、ハイエースやプロボックスなどの数合わせのバン車を3台といった具合で申請される方も多くいらっしゃいます。