相談者様
運送業の許可を取得するためには運転手は何人必要ですか?
行政書士
運転手は5名確保する必要があります。
相談者様
車両が5台必要だから運転手も5人という訳ですね。役員や運行管理者を運転手としてカウントすることはできるのでしょうか?
行政書士
おっしゃる通りです。役員さんは運転手としてカウントすることができます。運行管理者については、運行管理の補助者という役職の方を用意すれば5人のうちの1人としてカウント出来ます。
相談者様
なるほど、運転手は正社員でなければならないのですか?
行政書士
必ずしも正社員である必要はありませんので、パートやアルバイトでも大丈夫です。ただし、運転者になることができない方もいるので、一緒に確認していきましょう。
運送業の許可を新規で取得するためには、最低5名の運転手が必要となります。
この記事ではそんな運転手さんについて運送業専門の行政書士が解説します。
まず初めに、事業用トラックの運転手になれないパターンが3つあるので、覚えておきましょう。
法律にはこう書かれています。
(過労運転等の防止)
1 一般貨物自動車運送事業者等は、事業計画に従い業務を行うに必要な員数の事業用自動車の運転者(以下「運転者」という。)を常時選任しておかなければならない。
2 前項の規定により選任する運転者は、日々雇い入れられる者、二月以内の期間を定めて使用される者又は試みの使用期間中の者(十四日を超えて引き続き使用されるに至った者を除く。)であってはならない。
貨物自動車運送事業輸送安全規則 第三条より抜粋
つまり下記の①~③に該当する方は、事業用トラックを運転してはならないという事です。
なお、正社員でないといけないとは書いていないので、パート・アルバイトであることは全く問題ありません。
①は分かりやすいですね、明日も引き続き雇用される保証が無い人は、運転者としては認められませんというわけです。
②は短期バイトをイメージすると分かりやすいです。
雇用の期間が定めらている契約で、かつ2ヶ月以内という短い期間の人は、運転者としては認められませんというわけです。
③は少しややこしいですね。
まず会社として従業員に使用期間を設けるかどうか考えましょう。
設けないのであれば③は考える必要はありません。
使用期間というのは、法律用語ではないので特段法令に定めがあるわけではありませんが、一般的に従業員を雇用する前のお試し期間のような使われ方をします。
お試し期間を過ぎて、雇用主と労働者がお互いにやっていけそうなら、本採用という流れになるのが一般的かと思います。
話を戻して、会社として従業員に使用期間を設ける場合は、雇用してから14日間は事業用トラックを運転してはいけませんという事です。
なので、あまり無いパターンですが、運送業の許可を新しく取ろうとする場合に①、②に該当する方を運転手にしようとしても、必要となる5名にはカウントできないという事になります。
③については、これから許可を新しく取ろうとする場合は、正直関係ないかと思います。
たとえ使用期間を設けて雇用してから14日は運転できなくても、15日目からできますし、運転できない14日間は添乗指導や研修等、事業用トラックの運転以外の業務を行う事はできますからね。
そもそも申請時に会社として従業員に使用期間を設けるかどうかも確認されませんし、どこまでこの規定が機能しているのか疑問が残ります。
さて運転手は、基本的にどんな役職とも兼任することができます。
具体的に問題なく兼任できる役職は次の4つです。
問題となるのが、運行管理者との兼任です。
運行管理車は運転手と兼任できないと思われがちですが、実は兼任する方法があります。
それは冒頭の会話でも出てきた運行管理補助者を選任することです。
運行管理補助者とは、運行管理者に代わり運転手の点呼をすることができる役職です。
運行管理補助者は、NASVA(独立行政法人自動車事故対策機構)で運行管理基礎講習を受講することで選任することができます。
運行管理者が運転手と兼任できないと言われているのは、出庫の際に運行管理者自身を点呼する者がいないからです。
しかし、補助者がいれば運行管理者を点呼することができます。
セルフ点呼はできませんが、補助者が運行管理者を点呼し、運行管理者が補助者を点呼することはできます。
そのため、次のような人員で申請することが出来るという訳です。
この5人体制が、考えられる中で最低人数での申請です。
運送業の許可を新たに申請する場合、運転手さんは申請書を提出するまでに確保できていればベストです。
ですが、難しい場合は実際に運送業を開始するまででも問題ありません。
申請までに確保できた場合は、申請書の運転手を記載する欄に氏名を記載し、免許証のコピーを添付します。
申請までに確保が難しい場合は、運転手の欄には確保予定日を記載し、許可取得後に提出する「運輸開始前の確認について」という書類に運転手の氏名を記載し、免許証のコピーを添付します。
次の2つのいずれかに該当する場合は、社会保険に加入する義務が生じるので、保険に加入し加入したことを証明する保険証の写しや、雇用保険被保険者証の写しを運輸局に提出する必要があります。
例えば、正社員の労働時間を40時間/週、労働日数を20日/月と定めて雇用している場合で考えます。
この場合、アルバイト・パート従業員の働く時間を、30時間/週15日/月以上の契約で雇用する場合は、社会保険に加入する義務が発生します。
次の全部に該当した場合も、短時間労働者として社会保険に加入する義務が発生します。
なお、特定適用事業所(厚生年金加入者が100人(令和6年10月からは50人)に該当しない企業であっても、被保険者の同意に基づき、短時間労働者は社会保険に加入することが出来るため、実務上は加入する必要があるとされています。
この2つに該当せず、健康保険・雇用保険に加入する義務が発生しなければ、加入する必要はありません。
また、運転手に年齢制限もありません。