運送業の営業開始(運輸開始)までに行う事まとめ【従業員編】

一般貨物自動車運送業は、運送業の許可取得後すぐに営業開始できるわけではありません。

 

安全に事業用トラックにて営業を行うため、下記のとおり様々な準備をする必要があります。

 

従業員に関する準備
  • 適性診断の受診
  • 健康診断の受診
  • 初任運転者研修の受講
  • 運転記録証明書の取り寄せ

 

車両に関する準備
  • 自動車任意保険の切り替え
  • デジタコの導入
  • 会社名等の車体表示
  • ガソリンカード・ETCカードの準備

 

営業所に関する準備
  • 表札の記載
  • 運賃料金表・運送約款の掲示
  • 帳票類(運転者台帳、点呼記録簿、運転日報、日常点検表、運行管理規程、整備管理規程等)の準備
  • アルコールチェッカーの準備
  • 運行管理システムの配備

 

ここでは、営業開始(一般的に「運輸開始」といいます。)までに行う事のうち、運転手を始めとする従業員に関する準備をまとめました。

 

この記事を最後まで読むことで、許可取得後に少しでも早く運輸開始できる方法が分かります。
車両に関する準備はこちら
営業所に関する準備はこちら

 

適性診断の受診

 

適性診断とは、主に運送事業者の運転手に向けた、運転の長所・短所や運転の癖を測定し、事故防止に役立てることを目的とした診断です。

 

運転手適性診断には「一般診断」「初任診断」「適齢診断」など様々な種類があり、独立行政法人自動車事故対策機構、通称「NASVA」にて受講することができます。

 

一般貨物運送事業者は、運転手が初めてトラックに乗務する前に「初任診断」を受講するよう義務付けられており、以降も3年に一度、「一般診断」の受診が推奨されています。

 

一般貨物自動車運送事業者等は、国土交通大臣が告示で定めるところにより、次に掲げる運転者に対して、事業用自動車の運行の安全を確保するために遵守すべき事項について特別な指導を行い、かつ、国土交通大臣が告示で定める適性診断であって第十二条の二及び第十二条の三の規定により国土交通大臣の認定を受けたものを受けさせなければならない。
一 死者又は負傷者(自動車損害賠償保障法施行令(昭和三十年政令第二百八十六号)第五条第二号、第三号又は第四号に掲げる傷害を受けた者をいう。)が生じた事故を引き起こした者
二 運転者として新たに雇い入れた者
三 高齢者(六十五才以上の者をいう。)

 

貨物自動車運送事業輸送安全規則 第10条 第2項より引用

 

初任診断について、現時点では診断時間は約1時間40分で、手数料4,800円となります。

 

なお、こちらの診断については、運転をする可能性がある方すべて受診する必要があるため、運転手だけでなく、運行管理者や整備管理者についても受診しておいた方が良いでしょう。

 

健康診断の受診

 

会社は労働者を雇い入れたとき、その方のために健康診断を受診させる義務があります。
受診すべき項目は、下記に記載されている11項目となります。

 

 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。

 

一 既往歴及び業務歴の調査
二 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
三 身長、体重、腹囲、視力及び聴力(千ヘルツ及び四千ヘルツの音に係る聴力をいう。次条第一項第三号において同じ。)の検査
四 胸部エックス線検査
五 血圧の測定
六 血色素量及び赤血球数の検査(次条第一項第六号において「貧血検査」という。)
七 血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)及びガンマ―グルタミルトランスペプチダーゼ(γ―GTP)の検査(次条第一項第七号において「肝機能検査」という。)
八 低比重リポ蛋たん白コレステロール(LDLコレステロール)、高比重リポ蛋たん白コレステロール(HDLコレステロール)及び血清トリグリセライドの量の検査(次条第一項第八号において「血中脂質検査」という。)
九 血糖検査
十 尿中の糖及び蛋たん白の有無の検査(次条第一項第十号において「尿検査」という。)
十一 心電図検査

 

労働安全衛生規則 第43条より引用

 

これはもちろん運送会社にも当てはまるため、雇用した運転手や運行管理者、整備管理者等の従業員に受診させなければなりません。

 

受診すべき11項目については、一般的な診断項目であり、運転手だからといって特別な項目を受講する義務があるとかではありません。

 

なお、雇い入れ時だけでなく1年ごとに受講させる必要がありますので、忘れないようにしましょう。

 

初任運転者研修の受講

 

初任運転者研修とは、事業用トラックを運転する際の心構えや運転時に必要となる技術・知識の修得を目的とする研修です。

 

運送会社は運転手を新たに雇い入れたとき、初めてトラックに乗車する前に、初任運転者研修を受講させる必要があります。

 

過去に運転手として働いていた方も、過去3年以内に初任診断を受けていない場合は、初任運転者研修の対象となります。

 

講習の内容は、座学15時間以上、添乗指導20時間以上とかなりのボリュームがあります。

 

研修の実施が完了したら、運転者台帳に実施日を記録し、研修の内容を記載した書面を添付しておきます。

 

この研修については自社で行う事も可能ですが、ヤマト・スタッフ・サプライ等の機関で実施している場合もあります。

 

研修に使用するテキスト資料については、トラック協会の会員であれば、「事業用トラックドライバー研修テキスト」ダウンロードページから無料でダウンロードすることが可能です。

 

運転記録証明書の取り寄せ

 

運送事業者は、雇い入れた運転手の事故歴を把握し「事故惹起運転者」に該当するかどうかを把握しなければなりません。

 

新たに雇い入れた者の事故歴の把握
  一般貨物自動車運送事業者等は、安全規則第3条第1項に基づき運転者を常時選任するために新たに雇い入れた場合には、当該運転者について、自動車安全運転センター法(昭和50年法律第57号)に規定する自動車安全運転センターが交付する無事故・無違反証明書又は運転記録証明書等により、雇い入れる前の事故歴を把握し、事故惹起運転者に該当するか否かを確認すること。

 

貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針 より引用

 

この運転手の事故歴等を把握するための書類が「運転記録証明書」です。

 

運転記録証明書は、全国の自動車安全運転センターに申請することで発行が可能で、愛知県であれば平針の運転試験場の中にあります。

 

 

ご相談はお気軽に

 

今回は、運送業の営業開始までに必要な手続きのうち、従業員に関する準備について解説しました。
運送業の許可は取得して終わりというわけではなく、その後も様々な手続きが続きます。

 

運送業の許可を取得したい」「運送業の許可取得手続きで疑問がある」という方はお気軽にお問い合わせください。

 

 

スマホの方は下記のメニューバーからお電話、メールいただけます。