運送業の車庫は市街化調整区域に設けることはできますか?
その車庫が建物や屋根付きの有蓋車庫であるか、青空駐車場である無蓋車庫であるかによって異なります。
どのような違いがあるのですか?
無蓋車庫であれば市街化調整区域でも設けることができますが、有蓋車庫の場合は基本的に設けることができません。
今回の記事では、市街化調整区域に運送業の車庫を設けることについて解説を行います。
市街化調整区域とは、都市計画法という法律に基づいて指定される区域の一つです。
日本の土地は都市計画法により市街化区域と市街化調整区域に分類され、市街化区域とはその名の通り住宅、商業、工業などの都市的な土地利用が推奨され、新たな建物の建設や土地の開発が可能な地域です。
一方、市街化調整区域内では新たな住宅や商業施設の建設が制限されており、基本的に開発のための許可を取得しなければ建物を建てることができません。
建物や屋根のない青空駐車場である無蓋車庫は、市街化調整区域にも設けることができます。
なぜなら、市街化調整区域にて制限されるのは建物の建築であり、建物が無い以上その使用方法に関する制限は定められていないからです。
ただし、これはあくまで都市計画法による制限が無いというだけで、他の法律により車庫を設けることを制限される場合があります。
それが次の2つの法律による制限です。
それぞれどのような制限であるか解説します。
先ほど解説したとおり、無蓋車庫であれば市街化調整区域の土地に設けることができます。
ただし、その土地が農地である場合は話が別です。
日本の土地は、その土地の種類ごとに地目という区分が定められており、地目には次の21種類があります。
この中で「田」と「畑」は農地に分類され、農地は農地法という法律によって農地以外の土地利用ができないと定められています。
当然、農地をトラックを停めるための車庫として使用することは、農地法により禁止されています。
そのため、車庫として利用しようとしている土地がのうちであった場合は、農地転用という農地を別の地目に変更する手続きを行うか、その土地を諦めるしかありません。
農地転用を行う場合は、その土地がある市区町村役場に相談に行けば手続きの概要について教えてくれますが、手続きが煩雑であるため行政書士に依頼するのが良いでしょう。
農地法の他に車両制限令という法律により制限を受けることがあります。
車両制限令とは、道路において車両の通行を制限するための法令をいいます。
車庫とする土地の出入口に隣接する道路に関して、一定の道幅がないと車両制限令に引っ掛かり、運送業の車庫としては認められないという結論になってしまいます。
では、その一定の道幅というのは具体的に何メートルかというと、5.5~6.0m程度と言われています。
なお、こちらの数字は実際に駐車する車両の大きさや道路の種類によっても異なる部分です。
そのため実際に市町村役場にて車両制限令による証明をしてもらい、規定に引っ掛からないかどうかを試してみるのが良いでしょう。
車両制限令の申請方法について詳しく知りたい場合は車両制限令(道路幅の許可)の取得方法について解説をご覧ください。
冒頭の会話にもある通り、有蓋車庫は無蓋車庫と違い市街化調整区域に設けることは基本的に不可能です。
有蓋車庫を設けるための建物の建築が制限されているためです。
また、市街化区域であっても13種類の用途地域の中で次の4つの用途地域においては、有蓋車庫を設けることができません。
例外的に、市街化調整区域であっても有蓋車庫を設けることができる場合があります。
先程、市街化調整区域内では、開発のための許可を取得しなければ建物を建てることができないと言いました。
つまり裏を返せば、開発の許可を取得すれば建物の建築ができるという事です。
具体的には、大規模物流施設を建築するための開発許可を取得することができれば、市街化調整区域でも有蓋車庫の建築が可能となります。
こちらの開発許可についてはかなり大規模な物流施設を前提としており、許可の条件も厳しく設定されてはいますが、どうしても市街化調整区域に有蓋車庫を設けたい場合は一度検討してみるのもいいかもしれません。