運輸局による監査が行われる理由を解説

トラック運送会社にとって行政処分となる可能性がある運輸局による監査ですが、これは様々な理由を元に行われます。

 

主に監査となる理由は次の15つです。

 

  1. トラック協会や荷主等からの情報提供
  2. 運転者が第一当事者と推定される死亡事故を引き起こした場合
  3. 運転者が悪質違反を引き起こした場合
  4. 行政処分等の改善状況報告のための出頭を拒否等
  5. 適正化事業実施機関が行う巡回指導を拒否
  6. 公安委員会等からの通報
  7. 労働関係行政機関等からの通報
  8. 同一の事故を3年間に3回以上引き起こした場合
  9. 提出義務のある各報告書の未提出や虚偽報告
  10. 整備不良等による死傷事故
  11. 長期間にわたって監査が行われなかった場合
  12. 安全確保義務違反への関与が疑われる場合
  13. 監査等のあと事業用自動車を移動させた場合
  14. 呼出指導に正当な理由なく応じない場合
  15. その他総合的に監査が必要だと認められる場合

 

もしこれらに該当した場合、社会的影響の大きい場合や悪質な場合は特別監査となり、それ以外の場合には一般監査となります。

 

特別監査や一般監査など、監査の種類については「運輸局による監査」をご覧ください。

 

今回は、こちらの監査となる理由について詳細を解説します。

 

トラック協会や荷主等からの情報提供

 

トラック協会の適正化事業実施機関による巡回指導からの情報提供により、法令違反の事実又は疑いがある場合は、監査の原因となります。

 

巡回指導を甘く見てはいけない理由がこれです。

 

トラック協会には確かに行政処分を下す権限はありませんが、間接的に巡回指導からの行政処分となってしまう可能性があるのです。

 

また、トラック協会だけでなく、荷主等の利用者からの通報により法令違反が疑われる場合についても、監査が行われることがあります。

 

運転者が第一当事者と推定される死亡事故を引き起こした場合

 

ここでいう運転者とは、事業用トラックを運転したすべての人を言い、就業中はもちろんプライベートで使っていた場合に起こした事故も対象です。

 

また、第一当事者とは最初に事故に関与した運転者のうち、当該事故における過失が最も重い者を言います。

 

つまり事業用自動車で死亡事故を起こし、その運転手の過失が最も重い場合は監査となるという事です。

 

事業用の緑ナンバー車両をプライベート用で使うこと自体は問題ありませんが、くれぐれも事故を起こさないように注意したいところです。

 

運転者が悪質違反を引き起こした場合

 

ここでいう運転者も、やはり事業用トラックを運転したすべての者なので、プライベート使用中の違反も対象になります。

 

ただ、普段事業用トラックを運転している方が、プライベートで白ナンバーの自家用車を運転した際の違反については対象となりません。

 

なお、悪質違反とは次に掲げる違反を言います。

 

  • 救護義務違反(ひき逃げ)
  • 酒酔い運転
  • 薬物等使用運転
  • 妨害運転(蛇行運転やあおり運転)
  • 無免許運転
  • 酒気帯び運転
  • 過労運転
  • 無資格運転
  • 無車検運行
  • 無保険運行

 

また、引き起こした場合に限らず、引き起こしたと疑われる場合も該当します。

 

行政処分等の改善状況報告のための出頭を拒否等

 

行政処分を受けた後に、その後事業の改善状況の報告を命じられる場合があります。

 

そして、その報告のための出頭を拒否したり、改善報告をしなかったり、報告の内容から改善が認められなかったりすると監査の原因となります。

 

出頭の拒否や改善報告をしないという事はあまり考えられませんが、長距離輸送を行っている事業者が拘束時間の違反に関する改善ができない場合などはこれに該当します。

 

適正化事業実施機関が行う巡回指導を拒否

 

適正化事業実施機関であるトラック協会の巡回指導を、正当な理由なく拒否すると監査の原因となります。

 

これは容易に想像ができるので、あまり拒否する方はいないと思います。

 

なお、正当な理由なく巡回指導の日程を何回も引き延ばすことも、拒否と同視され監査の原因となる場合があるので注意しましょう。

 

公安委員会等からの通報

 

都道府県公安委員会や都道府県労働局、道路管理者等の公安機関からの事故通報が運輸局へ入ることがあります。

 

通報を受けた運輸局がその事故に対して、悪質な違反によるものだと判断した場合は監査となることがあります。

 

また、拘束時間に関する違反がある場合は、労働基準監督署から運輸局へ通報が入る場合もあります。

 

労働関係行政機関等からの通報

 

従業員について労災保険や雇用保険、健康保険等への加入がされていない場合、労働関係行政機関又は日本年金機構から社会保険への未加入について、運輸局へ通報が入ることがあります。

 

従業員への給与が、最低賃金法に違反している場合も通報が入る場合があります。

 

これらの通報についても、やはり監査の原因となります。

 

同一の事故を3年間に3回以上引き起こした場合

 

自動車事故報告規則 第二条に定められた重大事故を引き起こした場合は、管轄の運輸支局に事故報告書を提出する必要があります。

 

その事故報告書の様式における「事故の原因」と「事故の種類の区分」が同一であるものを3年間に3回以上引き起こした場合は監査の原因となります。

 

なお、事故の原因については警察の調書や運転者及び目撃者の証言等を参考に記入します。

 

事故の種類の区分については、事故報告書の様式にて「転覆、転落、路外逸脱、火災、踏切、衝突、死傷、危険物等、車内、飲酒等、健康起因、救護違反、車両事故、交通傷害、その他」から選択する方式になっています。

 

提出義務のある各報告書の未提出や虚偽報告

 

先ほど解説した事故報告書を始めとする提出義務のある報告書を、期日までに出さなかったり、記載内容に虚偽の疑いがある場合は、監査の原因となります。

 

なお、提出義務のある主な報告書と提出期限は次の通りです。

 

書類の名称 提出期限
自動車事故報告書 事故発生から30日以内
事業実績報告書 毎年7月10日
事業報告書 決算日から100日以内

 

整備不良等による死傷事故

 

ホイール・ボルトの損傷による車輪の脱落事故整備不良が原因で死傷事故を引き起こした場合は監査の原因となります。

 

なお、整備不要による事故において日常点検が実施されていなかった等の整備管理者の責任が追及される場合は、その整備管理者に解任命令等のペナルティが科される場合もあります。

 

長期間にわたって監査が行われなかった場合

 

とある運送会社にて、4年間監査も巡回指導も来ておらず他に監査の原因となるような事故等がなかったにもかかわらず、突然一般監査がきたという事例が実際にありました。

 

このように一定期間監査も巡回指導も行われていない場合は、それをもって監査が行われる原因となることがあります。

 

なお、Gマークを取得している事業者に関しては、長期間監査がなかったことによる監査の実施は行われないとされています。

 

安全確保義務違反への関与が疑われる場合

 

こちらは、長時間拘束や過積載等の強要など、安全確保義務違反に関与した元請業者への監査のことを言っています。

 

なお、安全確保義務については下記の通りになります。

 

一般貨物自動車運送事業者は、次に掲げる事項に関し国土交通省令で定める基準を遵守しなければならない。
一 事業用自動車の数、荷役その他の事業用自動車の運転に附帯する作業の状況等に応じて必要となる員数の運転者及びその他の従業員の確保、事業用自動車の運転者がその休憩又は睡眠のために利用することができる施設の整備及び管理、事業用自動車の運転者の適切な勤務時間及び乗務時間の設定その他事業用自動車の運転者の過労運転を防止するために必要な事項
二 事業用自動車の定期的な点検及び整備その他事業用自動車の安全性を確保するために必要な事項
2 一般貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の運転者が疾病により安全な運転ができないおそれがある状態で事業用自動車を運転することを防止するために必要な医学的知見に基づく措置を講じなければならない。
3 一般貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の最大積載量を超える積載をすることとなる運送(以下「過積載による運送」という。)の引受け、過積載による運送を前提とする事業用自動車の運行計画の作成及び事業用自動車の運転者その他の従業員に対する過積載による運送の指示をしてはならない。
4 前三項に規定するもののほか、一般貨物自動車運送事業者は、輸送の安全を確保するため、国土交通省令で定める事項を遵守しなければならない。

 

貨物自動車運送事業法第17条第1項から第4項より準用

 

一般貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務を行わせるため、国土交通省令で定めるところにより、運行管理者資格者証の交付を受けている者のうちから、運行管理者を選任しなければならない。

 

貨物自動車運送事業法第18条第1項より準用

 

一般貨物自動車運送事業者は、運行管理者に対し、第十八条第二項の国土交通省令で定める業務を行うため必要な権限を与えなければならない。

 

一般貨物自動車運送事業者は、運行管理者がその業務として行う助言を尊重しなければならず、事業用自動車の運転者その他の従業員は、運行管理者がその業務として行う指導に従わなければならない。

 

貨物自動車運送事業法第第22条第2項、3項より準用

 

監査等のあと事業用自動車を移動させた場合

 

監査を受けて法令違反の事実が判明すると、事業用トラックを一時使用停止などの行政処分が下されます。

 

その使用停止を免れるため、監査を受けた後や重大事故を引き起こした後などに、事業用トラックを他の営業所や関連会社に移動させた場合はさらに監査が入る原因となるという事です。

 

この場合は、移動させた会社はもちろん、移動先である関連会社等も監査の対象となります。

 

事業用トラックの使用停止は業務上かなりの痛手となりますが、それを逃れようとするとさらに深い傷を負う事になるため、絶対にしないようにしましょう。

 

呼出指導に正当な理由なく応じない場合

 

比較的軽い法令違反が疑われる場合は、営業所へ監査官が立ち入る臨店による監査ではなく、運輸局に責任者等を呼び出す呼出指導が行われる場合があります。

 

ここまでの流れで何となく予想がつくと思いますが、この呼び出しに応じない場合は、監査の原因となります。

 

その他総合的に監査が必要だと認められる場合

 

事故も違反もしていないのにもかかわらず、突然監査が来たという話を結構耳にします。

 

おそらく、車庫飛ばしや名義貸し等をしたことによる第三者からの通報内部の人間からの告発等様々な要因が考えられます。

 

毎年秋ごろになると、各都道府県の運輸支局が監査強化月間を設ける場合があります。

 

この時期は特に、小さな法令違反にも気を配る必要があります。