運送業の営業所を増設するにはどうすればいいですか?
業所を新たに増設するためには、現在の営業所を管轄する運輸支局に申請をして認可を得る必要があります。
そうなんですね、それでは早速申請の準備に取り掛かります。
ちょっと待ってください、その前に現時点で本当に営業所を増設できる状態か、よく確認したほうが良いです。
営業所を増設する時は、運輸局に申請する前に現時点で本当に営業所を増設できる状態か、よく確認しなければなりません。
いざ申請してみたら「これでは営業所の増設はできないので認可できません」では損失が大きいですからね。
この記事では運送業の営業所を増設しようと思ったときに確認すべき事項や、具体的な手順について解説します。
営業所を増設する前に、まずは現時点で本当に増設できる状態かどうか確認しましょう。
なぜなら運送業の営業所増設には、クリアしなければならない条件(一般的に「要件」といいます。)があるからです。
増設する時の要件は、大きく分けて次の6つです。
この要件の確認をしっかり行う事で、後々の手続きをスムーズに進めることができます。
それでは、各要件について一つずつ解説します。
当たり前と言えば当たり前ですが、営業所を増設する場合はそのための営業所と休憩施設が必要です。
では、営業所という事で屋根があればどんな建物でもよいかというと、そうではなく次の3つを満たす必要があります。
これは2年以上、その場所を使用する権利があるという事です。
その物件を所有しているのであれば、これは問題なくクリアです。
仮に賃貸している場合は、契約期間が2年以上でないといけないという事です。
営業所と休憩施設についての規模(広さ)についての決まりです。
適切な規模としか決まっていないので、具体的に何㎡以上でないといけないとは決まっていません。
ただ、これまで数多くの申請をしてきた経験上、営業所と休憩施設合わせて6畳程度は欲しいところです。
なので一般的なワンルームくらいの広さがあればよほど問題ありません。
この決まりが少し難しいです。
私たちが住んでいる街は、実は都市計画法という法律で、建物の使用方法が決まっています。
これを一般的に用途地域による制限といい、市街化区域と市街化調整区域に分かれ、市街化区域はさらに次の13種類があります。
そして、市街化調整区域や次の6つの地域である場合は営業所としての使用ができません。
つまりこれらの地域に建っている建物を営業所として増設しようとしても認可はおりません。
他にも農地法や建築基準法による制限にて営業所として使用できない場合も認可が下りないという事になります。
そのため、まず営業所として増設したい候補地が見つかったら、これらの法律に抵触していないか市区町村等に確認しなければなりません。
次の要件は「適切な車庫」です。
車庫も先ほどの営業所と同様、どこでもいいわけではなく次の4つを満たす必要があります。
営業所と同じ要件です。
車庫についても2年以上、その土地を使用する権利があればクリアです。
こちらは営業所と違い、必要な面積が具体的に決まっています。
当然と言えば当然ですが、用意する車両が全て収容できる広さを確保しなければなりません。
なお、収容できるかどうかについては、車両の縦横の長さに+1mを加えて計算する必要があります。
目安として駐車スペースが300㎡程度あれば十分5台を収容できる広さになります。
営業所については都市計画法が問題となることが多いですが、車庫については農地法や車両制限令が問題となることが多いです。
農地法とは主に農業用地に関する法律で、使用しようとする車庫の地目が「田」や「畑」のままになっているとそのままでは使用ができません。
車両制限令については、道路の道幅に関する法律で、使用しようとする車庫に接する道路が狭いと、これもまた車庫として使用することができません。
そのため、営業所と同じく車庫の候補地が見つかったら、これらの法律に抵触していないか確認する必要があります。
車庫は営業所に併設されているか、一定の距離の範囲内にあることが必要です。
愛知、岐阜、三重などの中部エリアは、この距離について直線で10kmと決められています。
一般貨物運送業は、1つの営業所に5台以上事業用トラックを配置しなければなりません。
つまり営業所を増設する際は、その営業所に5台以上の車両を配置する必要があります。
どのような車両であればいいかというと、新規で許可を取得した際の基準と同じです。
車検証上の用途が「貨物(一部の「特種」も可。)」となっている軽自動車以外の車両です。
また、元々の営業所に6台以上車両があれば、5台を下回らない範囲で、増設する営業所に移動させることができます。
一般貨物運送業は、営業所に配置する車両の数に応じて、最低1人の運行管理者をおく必要があります。
車両の数に対する必要な運行管理者の人数は下記の表の通りです。
車両の数 | 必要な運行管理者の数 |
---|---|
5台~29台 | 1名以上 |
30台~59台 | 2名以上 |
60台~89台 | 3名以上 |
90台~119台 | 4名以上 |
運行管理者となるためには、原則運行管理者試験に合格する必要があります。
また、元々の営業所に運行管理者が複数人いる場合、車両の数によっては増設する営業所に移動させる事ができます。
運行管理者について詳しく知りたい方は運送業許可取得において運行管理者がいない場合をご覧ください。
一般貨物運送業は、原則として1つの営業所に最低1人の整備管理者をおく必要があります。
原則としてと記載したのは、増設する営業所と元々の営業所の距離が近い場合、1人の整備管理者で2つの営業所を兼任することができる場合があるからです。
基本的に同じ都道府県内に営業所があれば、距離が近いと言える場合が多いですが、各都道府県の運輸支局によって扱いが異なるため、事前に確認しておく必要があります。
整備管理者について詳しく知りたい方は運送業許可取得において整備管理者がいない場合をご覧ください。
車両を運転するドライバーが、車両の数に応じて必要となります。
また、基本的に運行管理者と運転手は兼任することができませんので、運行管理者とは別で最低5人確保する必要があります。
なお、整備管理者は運転手と兼任することができますので、同じ方でも大丈夫です。
運送業の営業所を増設する際の要件が分かったところで、ここで実際に増設する際の流れを解説します。
おおまかな流れは次の通りになります。
まずは現時点で営業所を増設できるか、先ほど解説した要件を自社に照らし合わせて確認します。
これらを事前に確認しておかないと、余計な出費が増えたり後々の手続きで躓いてしまいます。
まずは徹底的に要件の確認を行いましょう。
要件を確認でき、問題ないと判断できた、もしくはあと少しで要件を満たすことが出来そうという事であれば、営業所や車庫、トラックなどの契約を行います。
営業所や車庫については、認可が下りないと運送業としての施設では使用することができないので、大家さんに実際に使用するまで賃料を下げてもらうよう交渉をしてみるのもいいかもしれません。
また、営業所や車庫については先ほど説明した2年以上の契約期間を設けるといった注意点があります。
詳しくは運送業許可取得において営業所・車庫を賃貸する時の注意点で解説しておりますので、ぜひご覧ください。
契約が完了したら、いよいよ申請に向けて必要な書類を準備します。
具体的に準備する書類は次の通りです。
案件や地域によって多少差がありますが、こちらが主に必要となる書類です。
必要となる書類がそろったら、いよいよ申請書に必要事項を記載して運輸局に申請します。
提出先は、増設しようとする営業所がある都道府県を管轄する運輸支局の貨物担当です。
運輸支局は基本的に1都道府県に1つ存在するため、愛知県内に営業所を増設する場合は愛知運輸支局に申請することになります。
また、申請書の様式については窓口にて受け取るか、運輸支局のホームページからダウンロードすることができます。
運輸局に対しての申請後、特に問題なければ2~3ヶ月で認可となります。
この期間内に、増設する営業所へ机や椅子、パソコン等の搬入や車庫の草刈り等の整備等、営業を行う準備を進めておきます。
そうすることで、認可が下りるのと同時に営業を開始することが可能となり、時間を有効活用することができます。
ただし、あくまで認可が下りた後でないと、その営業所にて運送業を行うことはできないため、くれぐれも準備にとどまる様にする必要があります。
認可が下りたら、改めてその営業所にて運行管理者と整備管理者を選任します。
選任届の提出が完了すると、「事業用自動車等連絡書」という書類が発行できますので、その書類を使い自動車のナンバープレートを変更します。(元々の営業所にあったトラックを移す場合は、車検証のみの変更で済む場合もあります)
ナンバープレートを事業用に変更したら、これでいよいよ増設した営業所にて営業開始です。
今回は、運送業の営業所を増設する場合の手続きについて解説しました。
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