霊柩車の事業に必要な許可はなんですか?
霊柩車による事業を行うためには、一般貨物自動車運送業許可(霊柩運送限定)という許可が必要です。
それはどのような許可ですか?
一般貨物なので、基本的には緑ナンバーのトラック運送と同じ許可となります。
霊柩車による事業を行うためには、いわゆる運送業の許可が必要となります。
「霊柩車なのになんで運送業?」と思われた方もいるかもしれませんが、霊柩車にて運搬するご遺体は、法律上は貨物に該当します。
一般貨物自動車運送業の許可を取得するためには、クリアしなければならない条件(一般的に「要件」といいます。)がいくつかあります。
しかし、霊柩車による事業は、霊柩運送の限定がついている分その要件が少しだけ易しくなっています。
それでは、その要件を一つずつ解説していきます。
先程説明したとおり、霊柩車の許可を取得するためにはいくつかの要件をクリアする必要があります。
要件には大きく分けて、「モノの要件」「ヒトの要件」「カネの要件」があります。
それでは一つずつ確認していきましょう。
霊柩車の許可を取得するためには、事業を行う上で使用する「営業所と休憩施設」を用意する必要があります。
営業所・休憩施設については特に広さや設備に関しての決まりはなく、一般的な事務作業ができて休憩ができれば問題ありません。
自己所有でないといけないという縛りもなく、大家さんの承諾があれば賃貸でも大丈夫です。
ただ一つ注意すべきことは、営業所として使用できない場所が法律で決まっている(用途地域による制限といいます。)ため、物件を決めてしまう前に用途地域の調査が必要となります。
営業所や休憩施設と同じく、運送業を行う上で必要となる車庫を用意する必要があります。
こちらも車両が全て収まれば、広さの制限はなく、賃貸でも大丈夫なんですがこちらも一つ注意点があります。
車庫に面する道路の幅が狭いとその車庫は運送業の車庫として認められません。(車両制限令に適合するといいいます。)
そのため車庫においても、契約の前に車両制限令に適合しているか調査が必要となります。
運送業において使用する霊柩車を1台以上確保する必要があります。
霊柩車と言えば、一昔前によく見かけた宮型タイプと呼ばれる、金ピカの霊柩車を想像される方がいるかもしれません。
しかし、昨今は宮型タイプの霊柩車はほとんど見かけなくなり、ご遺体を運ぶためのストレッチャー等を付けた、エスティマやヴェルファイア等のバンタイプ、ベンツやセンチュリー等のセダンタイプが多い印象です。
これらの車両については自己所有はもちろん、リース会社の承諾があればリース車両であっても大丈夫です。
運送業の許可を取得するためには、点呼や運行の管理をする役職である「運行管理者」を1人以上確保する必要があります。
運行管理者は、車両が5台以上ある場合は「運行管理者試験」という国家試験に合格する必要があり、トラックによる一般貨物運送業は車両を5台以上用意しなければなりません。
しかし、霊柩運送については車両は1台以上あれば良く、5台未満であれば運行管理者の資格は必要ありません。
なお、、今後霊柩車の台数を増やして、5台以上にしたいという場合は、運行管理者の資格を取得する必要があります。
運行管理者の資格等について詳しく知りたい方は、「運送業許可取得において運行管理者がいない場合」をご覧ください。
車両や車庫の整備に関しての責任者である「整備管理者」を1人以上確保する必要があります。
整備管理者は、車両が5台以上ある場合、3級以上の整備士資格を持っているか、運送会社にて2年以上の実務経験に加えて講習を受けることで確保することができます。
しかし運送管理者と同様、5台未満であればこれらの整備管理者の資格は必要ありません。
こちらも今後5台以上にしたい場合は、「運送業許可取得において整備管理者がいない場合」をご覧ください。
霊柩車を運転する車両の台数分確保する必要があります。
霊柩車を運転するための免許は旅客に必要な二種免許ではなく、一種免許(普通免許)で問題ありません。
ただし、下記に該当する方は運転手にカウントできませんので注意が必要です。
なお、運転手に年齢制限はなく、パート・アルバイトでも問題ありません。
霊柩車の許可を取得するためには、その事業を行う当面の運転資金が確保されていることを証明する必要があります。
運転資金とは具体的に、下記のような項目です。
項目 | 備考 |
---|---|
人 件 費 | 役員報酬や給与、社会保険料を含む6ヶ月分 |
燃料油脂費及び修繕費 | 燃料油脂費及び修繕費のそれぞれ6ヶ月分 |
車 両 費 | 購入費用(リースの場合は1年分のリース料) |
営業所の建物 | 購入費用(賃貸の場合は1年分の賃借料及び敷金等) |
車庫の土地 | 購入費用(賃貸の場合は1年分の賃借料及び敷金等) |
器具、工具什器、備品等 | 購入費用 |
保 険 料 | 自賠責保険・自動車任意保険の1年分 |
各 種 税 | 自動車税・自動車重量税の1年分、環境性能割及び登録免許税等 |
そ の 他 | 道路使用料、光熱水料、通信費、広告宣伝費等の2ヶ月分 |
これらの金額が全部でいくらになるかというと、車両の台数や価格、従業員の数や事務所の場所等によって大きく異なるため、正直何とも言えません。
しかし、事業を行う上で資金が多いに越したことはないため、自己資金だけでな不安がある場合は銀行に相談に行きましょう。
いわゆるメガバンクと呼ばれる大手の銀行は、融資のハードルが高い傾向にあります。
相談にいくなら地方銀行や信用金庫など、地域密着型の金融機関にするようにしましょう。
ここまで霊柩車の許可取得のための要件を解説しました。
ここで通常のトラックによる一般貨物自動車運送業許可との違いをまとめておきます。
発着地に制限がつくとはど何かというと、霊柩車の許可に「発地及び着地いずれもが○○県の区域以外に存する貨物の運送を行ってはならない」といった条件が付くという事です。
ここまで霊柩車の許可を取得するための要件について解説してきましたので、ここでは実際に事業を開始するまでの流れをまとめます。
霊柩車の事業は法人と個人、どちらでも始められます。法人で始める場合はまず法人を設立します。
自己資金だけで事業を行う事が不安である場合は、金融機関からの借り入れを行います。
また、事業のための営業所や車庫、運転手を確保します。
準備が整ったら申請書を作成し、管轄の運輸局へ申請書を提出します。
審査期間は4~5ヶ月です。
申請~許可までの間に法令試験が行われますので、役員が合格する必要があります。
許可が取得出来たら、従業員の社会保険加入やナンバープレートの取付等、事業開始に必要な準備を行います。
準備が整ったら営業開始です。運輸局に営業開始したことを届出し、全ての手続きが修了します。
なお、霊柩車の事業を開始する流れについて、営業先や運搬する物は違えど、基本的にトラックによる運送業と同じになります。
詳しく知りたい方は一般貨物自動車運送業の許可申請の流れをご覧ください。
今回は、霊柩車の事業を行うための許可や手続きについて解説しました。
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