運送業許可更新の条件を専門家が予想!

相談者様

 

トラック運送業の許可が更新制になるって本当ですか?

行政書士

 

はい、まだ正式に決定したわけではないですが、そのような動きがあることは間違いありません。

相談者様

 

更新制になったら、今後どのような手続きがあるんでしょうか?

行政書士

 

そうですね、現段階ではまだ内容が発表されていないので何ともいえませんが、更新条件を予想することはできるのでこちらの記事で解説します。

 

 

運送業許可更新制度の概要

令和7年4月17日、自民党がトラック運送業許可の5年更新制の改正案をまとめました。

 

この法案が審議の結果成立すれば、トラック運送業の許可である一般貨物自動車運送業許可は更新制となり、一定期間(おそらく5年)ごとに許可を受け直さなければならなくなります。

 

実はトラック運送業だけでなく、一般貸切旅客自動車運送業許可(貸切バス許可)や産業廃棄物収集運搬許可も5年ごとの更新制を導入しています。

 

特に貸切バスの更新許可は、トラックと同じ運輸局管轄による審査のため、トラック運送業の更新制度は貸切バスの更新制度と似た内容になることが予想されます。

 

今回の記事では、貸切バスの更新許可の条件をもとに、トラック運送業の許可更新の条件を予想していきます。

 

許可更新の条件予想

まずは、更新許可を先に導入している貸切バスの許可更新の条件を見ていきましょう。

 

原則として、下記の①~⑦の項目に当てはまらない事

 

  1. 事業収支見積書について計画期間中、毎年連続で赤字となっている場合
  2. 許可を申請する年の直近1事業年度において事業者の財務状況が債務超過であり、かつ直近3事業年度の収支が連続で赤字である場合
  3. 審査基準公示(平成14年1月31日付 中運局公示第264号)1.(9)①(ハ)~(ヌ)に定める安全投資に係る費用(修繕費、適性診断等の費用)について所要の単価を下回る単価に基づく収支見積りとなっている場合
  4. 最低賃金法に基づく地域別最低賃金以上の賃金が支払われていない場合
  5. 社会保険(健康保険・厚生年金保険)及び労働保険(雇用保険・労災保険)については、申請日の直近1年分の保険料の納付の確認ができない場合
  6. 前回許可時から更新申請時までの間に、行政処分(輸送施設の使用停止処分以上、又は使用制限(禁止)の処分)を受けたのち、認定された実施機関(別紙)による運輸安全マネジメント評価を受けていない場合
  7. 前回許可時から更新申請時までの間に毎年連続して、道路運送法等の違反により、行政処分(輸送施設の使用停止処分以上、又は使用制限(禁止)の処分)を受けている場合

 

こちらをトラック運送業に当てはめて、より分かりやすく表現すると下記のような形になると思います。

 

原則として、下記の①~⑦の項目に当てはまらない事

 

  1. 更新手続きをする直近5年間の間、毎年連続で赤字となっている場合
  2. 更新手続きをする直近の事業年度において債務超過(貸借対照表上の純資産の額がマイナス)であり、かつ直近3事業年度の収支が連続で赤字(益計算書上の経常損益がマイナス)である場合
  3. 更新許可申請の際に作成する安全投資計画の話?
  4. 従業員に対して支払っていいた給与が最低賃金を下回っていた場合
  5. 更新手続きをする直近1年において、社会保険(健康保険・厚生年金保険)及び労働保険(雇用保険・労災保険)の保険料の納付がされていない場合(従業員に対する適正な社会保険未加入も含む)
  6. 行政処分(車両停止や事業停止など)を受けたのち、適切な対応(改善報告書の提出やフォローアップ監査対応)を実施していない場合
  7. 毎年連続して、道路運送法等の違反により行政処分を受けている場合

 

おそらくこれと全く同じにはならないと思いますが、近い条件となることが予想されます。

 

許可更新の必要書類予想

 

更新の許可申請を行う際は、下記の書類を添付することを求められると予想されます。

 

もちろん予想なので、異なる場合もあると思いますが、新規許可の必要書類や貸切バスの更新許可の際に添付する書類を総合して考えると、大幅にずれることはないと思います。

 

  1. 事業計画を記載した書類
  2. 運行管理の体制を記載した書類
  3. 直近に提出した事業実績報告書(写)
  4. 直近に提出した事業概況報告書(写)
  5. 直近の巡回指導結果(写)
  6. 直近の貸借対照表(写)
  7. 社会保険料納入証明(申請)書
  8. (健康保険・厚生年金保険)納入告知書(事業主控)
  9. 労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書(事業主控)

 

①②の書類は新規で許可を取得した際にも添付したと思います。
なのでその時から変更がなければそのまま書き写せばいいと思います。

 

③④の報告書は運送事業者に毎年提出が義務付けられている書類なので、おそらく確認されると予想されます。

 

③は毎年7月10日まで、④は会社の決算日から100日以内という提出期限が設けられていますが、これを過ぎても提出自体はできますので、提出していない事業者様は今のうちに作成しておくことをお勧めします。

 

⑤はトラック協会による巡回指導ですね。
ランダムで指導員が営業所にやってきて、日ごろの帳票や適切な手続きを行っているかを調査した後、A~Eの5段階で評価されます。

 

直近の評価がA~Cであればおそらく問題ないですが、DもしくはE評価の場合は、もしかしたら更新許可に何らかの影響があるかもしれません。

 

⑥~⑨の書類は、会社の財務状況や社会保険加入手続きなど適切な労務管理がなされているかを確認する目的で提出が求められると予想されます。

 

まとめ

今回のトラック運送業許可の更新の動きは、悪徳事業者への制裁という目的があるようです。

 

なので、日ごろから適切な事業運営を行っている企業様は、手続きは増えてしまいますが、更新できないといった事はないかと思います。

 

更新制度は確実に運送事業者への負担が増えることとなりますし、更新ができずに運送事業を廃業せざるを得ない事業者様も、確実に一定数発生することが予想されます。

 

この手続きによって、適切な運営を行っている運送事業者様が、適正な運賃収受が可能となり業界全体の活性化につながれば良いと感じております。