運送業の車庫を設けたいのですが、設けることができない用途地域はありますか?
設けようとする車庫が屋根付きのいわゆる有蓋車庫なのか、青空駐車場である無蓋車庫なのかによって異なります。
とくに屋根はつけないので、無蓋車庫ですね。
無蓋車庫であれば用途地域による制限はありません。一方で、有蓋車庫の場合は設けることができる用途地域は限られています。
今回の記事では、運送業の車庫を設けようとした場合の用途地域による制限について解説します。
まず初めに、青空駐車所である無蓋車庫についての解説をします。
冒頭の会話にもある通り、無蓋車庫については用途地域による制限はありません。
ちなみに建物内部の車庫はもちろん有蓋車庫になりますが、屋外で庇(ひさし)や屋根などがついているだけでも有蓋車庫という扱いになりますので注意が必要です。
そのため市街化調整区域でも、用途地域以外の車庫としての条件を満たしていれば無蓋車庫を設けることは可能です。
問題となるのが、建物内部の車庫や屋根付きの車庫である有蓋車庫を設ける場合です。
有蓋車庫については、用途地域によって設けられる場所とそうでない場所に分かれます。
用途地域は市街化区域と市街化調整区域に分けれ、さらに市街化区域は次の13種類があります。
このうち、次の4つの用途地域については有蓋車庫を設けることができません。
さらに、次の4つの用途地域については設けられないわけではありませんが、建物は2階以下かつ、車庫の広さは300㎡以下という制限が付きます。
つまり、何ら制限なく有蓋車庫を設けることができる用途地域は、次の6つという事になります。
これら6つに該当すれば、特に制限なく有蓋車庫を設けることができます。
車庫を設ける場合においては、用途地域以外の制限もあるという事を忘れてはいけません。
これからその制限を3つ紹介しますが、これらは有蓋車庫・無蓋車庫ともに共通して当てはまります。
運送業の車庫は、事業の拠点である原則として営業所に併設していなければなりません。
つまり、営業所と同じ敷地内になければならないという事です。
しかし、なかなかそのような条件の物件はないかと思います。
そのため例外として、一定の距離内であれば営業所と車庫は離れていても良いという事になっています。
その一定の距離とは具体的に何キロであるかというと、地域によって異なります。
営業所の位置が愛知県、岐阜県、三重県、静岡県、福井県にある場合の中部運輸局管轄では直線距離で10kmという決まりになっています。
日本にある土地は、雑種地や宅地、畑という具合でその土地の状態を表す分類がされています。
この分類を「地目」といい、地目の中でも田と畑の2種類を農地という風に定めています。
そして、地目が農地である土地については農地以外の利用方法をしてはいけません。
当然、農地を車庫として使用することは農地法という法律で禁じられています。
「いやいや、田んぼを車庫として使用しようとはならないでしょ」と思われる方もいるかもしれませんが、一見田んぼに見えない雑種地のような土地が、台帳上は農地だったという事があります。
そのため、土地の見た目がどんなでも一度登記簿謄本を取得して地目を確認しておく必要があります。
仮に車庫としたい土地が農地であった場合は、その土地は諦めるか、農地転用という農地から別の地目に変更する手続きを行う必要があるからです。
最後の条件は、車庫の目の前の道路の広さ(幅員)についての制限です。
運送業の車庫として使用するためには、使用する土地の前面道路が車両制限令に抵触していないことが条件となります。
車両制限令とは、車両の幅に対して車道の道幅が適正であるかを定めた法律です。
つまり、車庫の出入口に接続する道路があまりにも狭いと、トラックを停めるとすれ違えなくなってしまうので制限しているという訳です。
具体的には5.5m~6.0m程度の道幅があれば良いとされていますが、これも駐車する車両の大きさによって多少数値が異なるので、一度車両制限令の申請をしてみるのが良いでしょう。