市街化調整区域に運送業の営業所を設ける方法を解説

相談者様

 

市街化調整区域に運送業の営業所を設けることはできないですか?

行政書士

 

基本的にはできません。ただし、例外もあり可能となる場合も少なからずあります。

相談者様

 

可能となる場合は、どのような場合ですか?

行政書士

 

ほとんどがトレーラハウスを営業所とする方法です。あとは開発許可を取得することにより可能となる場合も、ごくわずかですがあります。

 

運送業を営むにあたり、車庫内に営業所を設けたいけれど、市街化調整区域だから諦めているといったことは無いでしょうか。

 

たしかに市街化調整区域に営業所を設けることは基本的にできませんが、全く不可能という事はありません。

 

この記事では、市街化調整区域に運送業の営業所を設けようとする場合について解説します。

 

市街化調整区域に営業所を設けられるパターンは2つ

冒頭で説明したとおり、市街化調整区域に運送業の営業所を設けられるパターンは主に次の2つです。

 

  1. 営業所をトレーラハウスとする
  2. 開発許可を取得して建築する

 

それでは、それぞれのパターンについて解説します。

 

営業所をトレーラハウスとする

市街化調整区域に運送業の営業所を設けられる場合のほとんどが、このトレーラハウスによるパターンです。

 

そこで気になるのが、実際トレーラハウスの営業所はどうなんでしょうか?

 

市街化調整区域に設置できるのはいいですが、営業所としての機能が果たせなければ元も子もありません。

 

ということで、ここから営業所をトレーラハウスとすることのメリットとデメリットを解説します。

 

実際にトレーラハウスを使用している運送会社さんから聞いた意見もありますので、参考になると思います。

 

営業所をトレーラハウスとするメリット

まずはトレーラハウスとするメリットから紹介していきます。

 

メリット①建物としての扱いを受けない

最大のメリットはやはりこれでしょう。
建物としての制限を受けないからこそ、市街化調整区域に設置することも可能です。

 

さらに建物ではないので、固定資産税や不動産取得税がかからないほか、建物の建築に必要な建築確認申請や基礎工事などの土木工事が不要となります。

 

メリット②移動させることができる

トレーラーハウスはその名の通り、タイヤがついておりトレーラーの構造をしているため、トラクタでけん引して移動させることができます。

 

実際にトレーラハウスを納車する際は、実際にけん引されて設置する場所まで運ばれてきます。

 

通常の建物であれば、建てた後にそのままの形で移動させるという事はできないはずですが、トレーラハウスであれば構造上可能となります。

 

メリット③インフラ設備も整っている

トレーラハウスとはいえ、一般の事務所と変わらない設備を導入することが出来ます。
トイレはもちろん、電気や水道、ガスを引くことも出来ます。

 

そのためトレーラハウスだからという理由で、運営上不便な思いをするといったことはあまりないように感じます。

 

営業所をトレーラハウスとするデメリット

それでは次にトレーラハウスとするデメリットを紹介します。

 

デメリット①導入コストが高い

トレーラハウスは一から建築するような建物に比べれば導入コストはもちろん安くなります。
しかし、プレハブやコンテナハウスといった建物と比較すると、比較的高価になります。

 

デメリット②設置方法に制限がかかる

これは市街化調整区域に設置する前提となりますが、建物に該当しないように設置する必要があります。

 

そのため、「トレーラーハウスの進行方向に固定された障害物を設置できない」「階段やデッキをトレーラハウスに説着できない」「インフラの配線や配管は、工具なしで脱着できる接続方法でなければならない」といった制限が発生します。

 

デメリット③強風に弱い

これは、トレーラハウスを営業所として導入した運送会社さんに聞いた意見ですが、強風の日は結構揺れるとおっしゃっていました。

 

おそらく車両であるため、基礎工事をしていないことによる弊害かと思われます。

 

開発許可を取得する

先程解説したトレーラハウスについて、メリットとデメリットを踏まえたうえで、トレーラハウスを営業所にはできないとなると、あとは開発許可を取得するしか方法は無いかと思います。

 

開発許可については、愛知県では下記のように定められています。

 

市街化調整区域に関する都市計画が決定され、又は当該都市計画を変更してその区域が拡張
された際すでに宅地であった土地で現在まで継続して宅地であるもののうち、おおむね50戸以
上の建築物が連たんしている土地における開発行為又は建築行為若しくは用途変更で、申請の
内容が次の各項に該当するものとする。

 

1 予定建築物の用途は次の各号の一に掲げるもので、居住の用又は自己の業務の用に供する
ものであること。
(1) 住宅、店舗等で建築基準法別表第2(い)項、(ろ)項又は(は)項に掲げるもの。ただ
し、床面積については適用しない。
(2) 事務所、倉庫又は工場(作業場を含む。以下、同じ。)。ただし、建築基準法別表第2(る)
項、(を)項(第5号及び第6号を除く。)又は(わ)項(第1号から第6号までを除く。)
に掲げるものを除く。

 

2 予定建築物の用途は次の各号に掲げる用途に供しないものであること。
(1) 倉庫にあっては、建築基準法別表第2(と)項の準住居地域内において建築してはなら
ない規模以上の危険物の貯蔵等をするもの
(2) 「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」に規定する風俗営業及び性風俗
関連特殊営業等

 

3 工場にあっては、周辺の土地利用上支障がなく、周辺の環境条件に悪影響を及ぼさないも
のであり、所在市町村長の支障がない旨の副申書が添付されているものであること。

 

4 申請地の規模は、居住の用に供するものにあっては5ヘクタール未満とし、第1項第1号
に該当するもの(居住の用に供するものは除く。)については1,000平方メートル以下、同項
第2号に該当するものは500平方メートル以下であること。

 

5 建築物の高さは、原則として10メートル以下であること。

 

6 住宅の開発行為及び建築行為で、一戸建ての住宅の一画地の最低敷地面積は原則として160
平方メートル以上であること。ただし、土地利用上やむを得ない場合で、複数の区画がある
場合は、全体区画の数に0.2を乗じて得た数(平成20年3月24日以降分筆等による分割が
なされていないものについて、その数が1に満たない場合は1とする)を超えない数の区画
について140平方メートル以上とすることができる。

 

7 居住の用に供する建築物(一戸建ての住宅を除く。)にあっては、駐車場がその敷地内に適
切に設けられていること。

 

8 開発又は建築若しくは用途変更を行うために他法令による許認可等が必要な場合は、その
許認可等が受けられるものであること。

 

愛知県開発審査会基準 17号 既存の宅地における開発行為又は建築行為等より引用

 

わかりずらいので要約すると、次の条件を満たしている場合に限り開発許可を取れば、営業所を建築することができると言っています。

 

  1. 建築しようとする土地の地目が線引き前から「宅地」であること
  2. 建築しようとする土地の付近に50戸以上の建築物が密集していること

 

なお、線引き前とはいつの事を言っているかというと、一部を除いて愛知県では「昭和45年11月24日」です。

 

つまり①は、土地の地目が昭和45年11月24日から現在までずっと「宅地」であるという事です。

 

この2つの条件を満たしていれば、開発許可を取得できる可能性がありますので、まずはその土地を管轄する自治体に問い合わせてみましょう。