運送業の運転者台帳について必須項目や記入例について解説!

運転者台帳とは、運転者の名前や住所、免許証の情報などの情報を記録しておく書類の事です。

 

運送業の営業所ごとに作成・管理をし、3年間書面又はデータとして保管しておかなければなりません。

 

運転者台帳の記載する事項

 

運転者台帳に記載が必要となる事項下記の通りです。

 

  1. 作成番号
  2. 作成年月日
  3. 事業者の氏名又は名称
  4. 運転者等の氏名、生年月日及び住所
  5. 雇入れの年月日及び運転者等に選任された年月日
  6. 運転免許証の番号及び有効期限
  7. 運転免許の年月日及び種類
  8. 運転免許の条件(条件がある場合のみ)
  9. 事故の概要(事故がある場合のみ)
  10. 交通違反の概要(違反がある場合のみ)
  11. 運転者等の健康状態
  12. 特定の運転者への指導の実施状況
  13. 適性診断の受診状況
  14. 運転者の写真(台帳の作成前六月以内に撮影した単独、上三分身、無帽、正面、無背景のもの)

 

この14項目は法律で記載するよう決められているため、必ず記載が必要です。

 

この中でも特に取り扱いが分かりにくい部分を、それぞれ解説します。

 

⑨交通事故の概要

 

運転手が事業用自動車にて事故を起こした場合に、その事故の概要を運転者台帳に記載するという内容です。

 

この場合、いわゆる「もらい事故」についても記載が必要かというと実はそうではありません。

 

ここで言う事故とは、次のように規定されています。

 

「事故を引き起こした場合」とは、原則として、当該運転者等が当該事故の発生に最も大きな責任を有する場合(いわゆる第1当事者である場合)を指し、明らかにいわゆる第2当事者以下の当事者である場合は記載しなくてよい。

 

「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」より引用

 

つまり、起きた事故について最も責任が重い場合のみ記載が必要となります。

 

それでは、その事故が発生した時点で誰が一番責任が重いか判断できない場合はというと、次のように定められています。

 

当該運転者等が第1当事者であるかどうか直ちに判断することができない場合は、第1当事者であるかどうか判断を保留する旨を付して記載させること。この場合、後に自動車保険の支払査定、示談又は裁判等の結果により第1当事者であるかどうかの判断をすることができたときに、その旨を記載するとともに、その判断の根拠とした資料の写しを添付させること。
「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」より引用

 

この場合は、運転者台帳の事故詳細欄には、とりあえず第1当事者の判断を保留する旨を記載し、責任者が判明したらその旨を記載し、保険会社からの事故に関する書面を添付するという流れとなります。

 

⑩交通違反の概要

 

運転手が事業用自動車にて交通違反を起こした場合に、その違反の概要を運転者台帳に記載するという内容です。

 

記載が必要となる違反は、第百八条の三十四の通知を受けた場合とされており、具体的には下記の違反内容となります。

 

(1) 救護義務違反(道路交通法第117条の違反行為をいう。)
(2) 酒酔い運転(道路交通法第117条の2第1号の違反行為をいう。)
(3) 麻薬等運転(道路交通法第117条の2第3号の違反行為をいう。)
(4) 妨害運転(道路交通法第117条の2第6号及び第117条の2の2第11号の違反行為をいう。)
(5) 無免許運転(道路交通法第117条の2の2第2号の違反行為をいう。)
(6) 酒気帯び運転(道路交通法第117条の2の2第3号の違反行為をいう。)
(7) 過労運転等(道路交通法第117条の2の2第7号の違反行為をいう。)
(8) 大型自動車等無資格運転(道路交通法第118条第1項第7号の違反行為をいう。)
(9) 速度超過(道路交通法第118条第1項第1号又は第2項の違反行為のうち、法第22条の規定によりこれを超える速度で進行してはならないこととされている最高速度を30キロメートル毎時(高速自動車国道等においては40キロメートル毎時)以上超える速度で運転する行為に限る。)
(10) 積載物重量制限超過(法第118条第1項第2号の違反行為のうち、車両について第57条第1項の規定により積載物の重量の制限として定められた数値の2倍以上の重量の積載をして大型自動車等を運転する行為に限る。)
(11) (1)~(10)までに掲げる法違反以外のもので、死亡事故(事業用自動車の運転者が第一当事者であるものに限る。)に係るもの
(12) 無車検運行(道路運送車両法(昭和26年法律第185条)第58条第1項の規定に違反する行為をいう。)
(13) 無保険運行

 

「道路交通法第108条の34の規定による車両の使用者及び監督行政庁に対する通知要領について」より引用

 

上記の違反があった場合は、運転者台帳に取り締まりを受けた日時と内容等の概要を記載します。

 

⑪運転者等の健康状態

 

運転手の健康診断の受診日を運転者台帳に記載するという内容です。

 

診断の結果、何らかの異常が見られた場合は、診断結果も併せて記載するか診断結果等の写しを添付します。

 

また、診断の結果「要検査」や「要精密検査」であった場合、強制ではありませんが、再検査等の措置が推奨されています。

 

そのため、診断結果等の写しと一緒に再検査結果の写しも一緒に添付しておくとよいでしょう。

 

⑫特定の運転者への指導の実施状況

 

特定の運転者とは「初任運転者」、「事故惹起運転者」、「高齢運転者」の3つの区分を総合した呼び方で、それぞれの定義は下記の通りです。

 

運転者の区分 定義
初任運転者 運送業の営業所にて新たに雇い入れる運転者
事故惹起運転者 死亡または重症者を生じる事故を起こした運転者。または軽傷者を生じる事故を起こし、その事故の過去3年間において何らかの交通事故を起こした運転者
高齢運転者 65歳以上の運転者

 

いま紹介した特定の運転者については、国土交通省が定めている「貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」にて運転者に対する指導及び監督内容が定めらております。

 

当然、該当する運転者はこちらの指針に従って指導を行わなければならず、運転者台帳にも実施日や内容を記録しておく必要があります。

 

⑬適性診断の受診状況

 

適性診断とは、運転者の運転技術に関する長所・短所や運転の癖を測定し、事故防止に役立てることを目的とした診断です。

 

この適性診断は、法律で運送会社の運転手に診断が義務付けられてるため、受診の結果や日時等の情報を運転者台帳に記録しておく必要があります。

 

運転者の区分 必要となる診断 受診時期
初任運転者 初任診断

運送業の営業所にて新たに雇い入れた後、初めてトラックに乗務する前。
ただし、やむを得ない事情がある場合は、常務後1か月以内に受診する。

事故惹起運転者(下記に該当しない運転者) 特定診断Ⅰ 事故を起こした後、再び事業用トラックに乗務する前。
事故惹起運転者(死亡又は重傷事故を起こし、かつ、当該事故前の1年間に事故を起こした者) 特定診断Ⅱ 事故を起こした後、再び事業用トラックに乗務する前。
高齢運転者 適齢診断

65歳に達した日以後1年以内、その後3年以内毎に1回。
ただし、運転者に選任時すでに65歳以上であった場合は、選任から1年以内に受診する。

 

運転者台帳の記載例

 

実際に運転者台帳を記載してみるとこのような形になります。

 

 

作成日

 

雇用した日に作成するのが望ましいため、雇用年月日と同日とします。

 

選任年月日

 

初任診断や初任運転者研修後になるため通常、雇用年月日年以降の日付となります。

 

運転免許証関係

 

免許の更新の度に、有効期限等の情報を更新しておくとともに、免許証のコピーも添付します。

 

履歴

 

履歴書を添付することで記載を省略することができます。