トラック協会による巡回指導とは?当日の流れやチェック項目を解説!

トラック協会から巡回指導が来るという通知を受けて、不安になった経験はないでしょうか?
運送会社のほとんどが、巡回指導に対してネガティブなイメージがあります。

 

しかし巡回指導は運輸局が行う監査とは異なり、何か特定の原因によって行われるものではありません。
つまり、なにか法令違反の疑いがあるわけではないので、しっかりと対策すれば大丈夫です。

 

今回は、トラック協会が行う巡回指導について当日の流れやどんな書類をチェックするか等を解説します。

 

巡回指導の概要

 

巡回指導とは、地方運輸局から指定を受けた適正化事業実施機関であるトラック協会が行う、「法令遵守に関する確認と指導」のことを言います。

 

基本的に実施日の約1か月前に書面による通知があり、その通知には当日用意する書類や自身で法令遵守状況をチェックする自主点検表が入っています。

 

当日は数人の指導員が営業所へ立ち入り、用意した書類をもとに法令順守の状況について確認を行います。

 

書類の確認後は、現時点での法令遵守の状況としてA~Eまでの5段階で評価をされます。

 

巡回指導でD判定及びE判定となってしまうと、重点事業者となってしまい、半年毎に巡回指導が行われることになってしまいます

 

最悪の場合、増車や車庫の拡張、営業所新設といった事業規模拡大ができなくなり、事業運営の足かせになってしまいます。

 

巡回指導のチェック項目

 

巡回指導でチェックされる項目は、次に掲げる38項目として決まっています。(重要な項目については赤文字で示しています。)

 

  1. 主たる事務所及び営業所の名称、位置に変更はないか。
  2. 営業所に配置する事業用自動車の種別及び数に変更はないか。
  3. 自動車車庫の位置及び収容能力に変更はないか。
  4. 乗務員の休憩・睡眠施設の位置、収容能力は適正か。
  5. 乗務員の休憩・睡眠施設の保守、管理は適正か。
  6. 役員・社員、特定事業者に係る運送の需要者の名称変更等の届出事項に変更はないか(本社巡回に限る)。
  7. 自家用貨物自動車の違法な営業類似行為(白トラの利用等)はないか。
  8. 名義貸し、事業の貸渡し等はないか。
  9. 事故記録が適正に記録され、保存されているか。
  10. 自動車事故報告書を提出しているか。
  11. 運転者台帳が適正に記入等され、保存されているか。
  12. 車両台帳が整備され、適正に記入等がされているか。
  13. 事業報告書及び事業実績報告書を提出しているか。(本社巡回に限る。)
  14. 運行管理規程が定められているか。
  15. 運行管理者が選任され、届出されているか。
  16. 運行管理者に所定の講習を受けさせているか。
  17. 事業計画に従い、必要な運転者を確保しているか。
  18. 過労防止を配慮した勤務時間、乗務時間を定め、これを基に乗務割が作成され、休憩時間、睡眠のための時間が適正に管理されているか。
  19. 過積載による運送を行っていないか。
  20. 点呼の実施及びその記録、保存は適正か。
  21. 乗務等の記録(運転日報)の作成・保存は適正か。
  22. 運行記録計による記録及びその保存・活用は適正か。
  23. 運行指示書の作成、指示、携行、保存は適正か。
  24. 乗務員に対する輸送の安全確保に必要な指導監督を行っているか。
  25. 特定の運転者に対して特別な指導を行っているか。
  26. 特定の運転者に対して適性診断を受けさせているか。
  27. 整備管理規程が定められているか。
  28. 整備管理者が選任され、届出されているか。
  29. 整備管理者に所定の研修を受けさせているか。
  30. 日常点検基準を作成し、これに基づき点検を適正に行っているか。
  31. 定期点検基準を作成し、これに基づき、適正に点検・整備を行い、点検整備記録簿等が保存されているか。
  32. 就業規則が制定され、届出されているか。
  33. 36協定が締結され、届出されているか。
  34. 労働時間、休日労働について違法性はないか。(運転時間を除く)
  35. 所要の健康診断を実施し、その記録・保存が適正にされているか。
  36. 労災保険・雇用保険に加入しているか。
  37. 健康保険・厚生年金保険に加入しているか。
  38. 運輸安全マネジメントの実施は適正か。

 

巡回指導の当日は、この38項目について一つずつ適正かチェックされ、「適」と「否」に判別されます。

 

確認後、下記の表に従ってA~Eの評価が決まります。(ただし赤文字で示した重要項目が「否」であった場合は、総合評価が1段階引き下げられます。)

 

「適」の割合 総合評価
90%以上 A (大変良い)
80%~90%未満 B (良い)
70%~80%未満 C (普通)
60%~70%未満 D (悪い)
60%未満 E (大変悪い)

 

巡回指導での評価が低いことのデメリット

 

巡回指導での評価が良くなかった場合、それだけをもってすぐに行政処分等のペナルティが課されることはありません。

 

そのそもトラック協会は、運輸局と異なり運送会社に不利益となる処分を下す権限がないからです。

 

しかし、だからと言って当然悪い評価となってもデメリットが無いわけではありません。

 

運送業を行う上で様々な弊害が生じる可能性があるほか、間接的に行政処分となってしまう事があります。

 

ここでは、そんな巡回指導の評価によるデメリットを紹介します。

 

デメリット1 次の巡回指導までの期間が短くなる

 

巡回指導の評価がD判定又はE判定の場合は、次の巡回指導までの期間が短くなります。

 

というのも、D判定又はE判定を取ってしまうと、「否」判定だった法令違反についての改善をするよう指導されます。

 

そしてその改善についての再調査として、約半年後に再度巡回指導が行われます。

 

ちなみに、A判定だった場合については、巡回指導が行われるペースは2~3年に1度程度になると言われています。

 

デメリット2 事業拡大ができなくなる

 

運送業における事業拡大とは、営業所の新設や車庫の増設、増車など事業規模を拡大する行為を言います。

 

ちなみに営業所・車庫の移転の場合は、移転先の施設面積が移転前の施設面積より小さければ事業拡大とはなりません。

 

また、車両の入れ替えや減車についても事業拡大とはなりません。

 

巡回指導の結果がE判定である場合で、指摘を受けた全ての項目についてまだ改善報告を行っていない場合は、事業拡大ができなくなります。

 

事業が軌道に乗っているときに、このような制限はかなりの痛手となりますので、なんとかE判定だけは避けるようにしたいところです。

 

デメリット3 運輸局による監査の原因となる

 

巡回指導によって、先ほど赤文字で記載した重要項目に法令違反が見つかると、トラック協会から管轄の運輸局にその旨の通報が行く場合があります。

 

この通報は、運輸局による監査が行われる原因となります。

 

仮に実際に監査が行われ、トラック協会からの指摘のように法令違反が見つかると、今度はその違反をもって行政処分となってしまいます。

 

行政処分になると、車両の使用停止や最悪の場合は許可取り消しとなる場合もあります。

 

デメリット4 Gマーク取得の難易度が上がる

 

Gマークとは、トラック協会によって、輸送の安全確保に取り組む運送会社を認定するという制度で、認定を受けることで様々な優遇を受けることができます。

 

このGマークを取得するための条件の一つとして、巡回指導の結果が定められています。

 

将来的にGマークを取りたいと考えている事業者さんは、なるべく巡回指導の結果を良くして、Gマークを取得しやすくしたいところです。