トラック協会から巡回指導が来るという通知を受けて、不安になった経験はないでしょうか?
運送会社のほとんどが、巡回指導に対してネガティブなイメージがあります。
しかし巡回指導は運輸局が行う監査とは異なり、何か特定の原因によって行われるものではありません。
つまり、なにか法令違反の疑いがあるわけではないので、しっかりと対策すれば大丈夫です。
今回は、トラック協会が行う巡回指導について当日の流れやどんな書類をチェックするか等を解説します。
巡回指導とは、地方運輸局から指定を受けた適正化事業実施機関であるトラック協会が行う、「法令遵守に関する確認と指導」のことを言います。
基本的に実施日の約1か月前に書面による通知があり、その通知には当日用意する書類や自身で法令遵守状況をチェックする自主点検表が入っています。
当日は数人の指導員が営業所へ立ち入り、用意した書類をもとに法令順守の状況について確認を行います。
書類の確認後は、現時点での法令遵守の状況としてA~Eまでの5段階で評価をされます。
巡回指導でD判定及びE判定となってしまうと、重点事業者となってしまい、半年毎に巡回指導が行われることになってしまいます
最悪の場合、増車や車庫の拡張、営業所新設といった事業規模拡大ができなくなり、事業運営の足かせになってしまいます。
巡回指導でチェックされる項目は、次に掲げる38項目として決まっています。(重要な項目については赤文字で示しています。)
巡回指導の当日は、この38項目について一つずつ適正かチェックされ、「適」と「否」に判別されます。
確認後、下記の表に従ってA~Eの評価が決まります。(ただし赤文字で示した重要項目が「否」であった場合は、総合評価が1段階引き下げられます。)
「適」の割合 | 総合評価 |
---|---|
90%以上 | A (大変良い) |
80%~90%未満 | B (良い) |
70%~80%未満 | C (普通) |
60%~70%未満 | D (悪い) |
60%未満 | E (大変悪い) |
巡回指導での評価が良くなかった場合、それだけをもってすぐに行政処分等のペナルティが課されることはありません。
そのそもトラック協会は、運輸局と異なり運送会社に不利益となる処分を下す権限がないからです。
しかし、だからと言って当然悪い評価となってもデメリットが無いわけではありません。
運送業を行う上で様々な弊害が生じる可能性があるほか、間接的に行政処分となってしまう事があります。
ここでは、そんな巡回指導の評価によるデメリットを紹介します。
巡回指導の評価がD判定又はE判定の場合は、次の巡回指導までの期間が短くなります。
というのも、D判定又はE判定を取ってしまうと、「否」判定だった法令違反についての改善をするよう指導されます。
そしてその改善についての再調査として、約半年後に再度巡回指導が行われます。
ちなみに、A判定だった場合については、巡回指導が行われるペースは2~3年に1度程度になると言われています。
運送業における事業拡大とは、営業所の新設や車庫の増設、増車など事業規模を拡大する行為を言います。
ちなみに営業所・車庫の移転の場合は、移転先の施設面積が移転前の施設面積より小さければ事業拡大とはなりません。
また、車両の入れ替えや減車についても事業拡大とはなりません。
巡回指導の結果がE判定である場合で、指摘を受けた全ての項目についてまだ改善報告を行っていない場合は、事業拡大ができなくなります。
事業が軌道に乗っているときに、このような制限はかなりの痛手となりますので、なんとかE判定だけは避けるようにしたいところです。
巡回指導によって、先ほど赤文字で記載した重要項目に法令違反が見つかると、トラック協会から管轄の運輸局にその旨の通報が行く場合があります。
この通報は、運輸局による監査が行われる原因となります。
仮に実際に監査が行われ、トラック協会からの指摘のように法令違反が見つかると、今度はその違反をもって行政処分となってしまいます。
行政処分になると、車両の使用停止や最悪の場合は許可取り消しとなる場合もあります。
Gマークとは、トラック協会によって、輸送の安全確保に取り組む運送会社を認定するという制度で、認定を受けることで様々な優遇を受けることができます。
このGマークを取得するための条件の一つとして、巡回指導の結果が定められています。
将来的にGマークを取りたいと考えている事業者さんは、なるべく巡回指導の結果を良くして、Gマークを取得しやすくしたいところです。