標準的な運賃は届け出たほうがいいのでしょうか?
届けなくても罰則等があるわけではないので、どちらでも良いというのが答えです。しかし、この「標準的な運賃」という制度を知ることで、もしかしたら「ぜひ届け出をしたい」という考えになるかもしれません。
そもそも標準的な運賃とはどのような制度なのでしょうか。
なかなか浸透せず、分かりにくい制度かもしれませんね。それではこの記事では標準的な運賃の制度について解説します。
運送業をしていると「標準的な運賃」という単語を一度は聞いたことがあるかもしれません。
しかし、それは何かと聞かれると答えられる方は少ないように思います。
標準的な運賃とは一言で言うと、国が物流業の運賃を上げるために作った理想的な運賃体制です。
その理想的な運賃を運送会社が届け出ることにより、運賃の値上げを狙い、ひいては運送業界全体の維持向上を目指すというのが国の狙いです。
それでは、標準的な運賃を届け出れば自動的に運賃が上がるのでしょうか?
答えはNOです。
なぜなら運賃を国に届け出たとしても、その運賃は荷主に対しての強制力が無いからです。
結局、標準的な運賃を届け出るという行為は、荷主に対しても運賃交渉の一要因にとどまり、決定的な値上げに繋がりにくいのです。
その結果、なかなか運送会社も積極的に届けようという運びにならず、制度そのものが浸透していないというのが現状です。
昨今、一般貨物運送業は労働環境や低賃金の問題から、深刻なドライバー不足となっています。
これを踏まえ、ドライバーの労働条件改善や賃上げを図るため、平成30年12月に「貨物自動車運送事業法」が改正され、令和2年4月標準的な運賃の告示制度が始まりました。
これが標準的な運賃制度の始まりです。
しかし、国土交通省が出している資料のとおり、令和4年度時点において標準的な運賃と同等の運賃を得ている事業者は全体の15%と、実際の契約額との差は大きかった事が分かります。
それを踏まえて国土交通省は、さらに運賃の8%の引き上げや、燃料サーチャージの基準額を見直し、令和6年3月に新しい標準的な運賃を告示しました。
これが現時点で最も新しい標準的な運賃で、トラック協会のホームページでも確認することができます。
この動きから、国も本気で日本の物流業界に危機感を感じているのが分かります。
運送会社が1社でも多く、新しい標準的な運賃を届け出て、その運賃を採用し物流事業の向上を狙っているわけです。
先程、標準的な運賃を届け出ても自動的に運賃は上がらないと言いました。
それは間違いありません。
実際に運賃の値上げを交渉するのは、それぞれの運送会社であって標準的な運賃を受理した国ではないからです。
それでは、やはり届け出は無意味なのでしょうか?私はそうは思いません。
実際に国は、不当に運賃を安くしたとして複数の荷主企業を実名報道する等、運賃を上げる措置を確実に取っています。
このような措置を後押しできるのは、やはり一つ一つの運送会社の意識であると思います。
標準的な運賃の届け出もその意識の一つです。
1社でも多くこの運賃を採用しようとする意識が、やがて物流業全体の利益に繋がることでしょう。
選挙も同じですが、確かに自分ひとり行動したからと言ってすぐに何かが変わるわけではありません。
しかし、その届け出は業界をよくするための確実な一歩なので、是非届け出をしていただきたいと私は思います
標準的な運賃を届け出るには、運送業の営業所を管轄する運輸支局に、運賃料金設定(変更)届を提出します。
運賃料金設定(変更)届の様式は、トラック協会のホームページでや運輸局のホームページにあります。
ここで注意点ですが、令和2年告示の標準的な運賃を既に届出ている事業者は、令和6年告示の標準的な運賃を適用する場合、特にすることはありません。
届け出が必要なのは、初めて標準的な運賃を届出する場合や、令和6年告示の標準的な運賃を適用せず引き続き令和2年告示の標準的な運賃を適用する場合です。
つまり令和2年告示の標準的な運賃を既に届出ている事業者は、何もしなければ自動的に令和6年告示の標準的な運賃を適用することになります。
これは、恐らく事業者の手間を減らすためもあるでしょうが、より多くの方に令和6年告示の標準的な運賃を適用してもらうためだと考えらえます。
今回は、標準的な運賃について解説しました。
「トラック協会から標準的な運賃を提出するよう言われたがどうすればいいか分からない」「標準的な運賃の届け出をお願いしたい」という方はお気軽にお問い合わせください。
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