相談者様
レンタカー事業を開業するためには、事務所が必要ですよね?
行政書士
はい、レンタカー事業を行うためには自家用自動車有償貸渡業の許可を取る必要があり、許可の条件として最低1つ事務所を設ける必要があります。
相談者様
なるほど、この事務所というのは会社の登記簿に載っている住所でないといけないんですか?
行政書士
いえ、そのような決まりはありませんので登記簿上の住所でなくても大丈夫です。ただし、登記簿上の住所以外の場所を事務所にする場合は、やるべき手続きが1つ増える可能性があります。
今回の記事では、レンタカー事業を始める場合の事務所について解説します。
まず冒頭の会話にあるとおり、レンタカーの事務所は会社の登記簿に載っている本店の住所でなくても全く問題ありません。
つまり、東京に本店を置く会社が、沖縄にレンタカーの事務所を設けることも可能だという事です。
この時、沖縄のレンタカー事務所を支店として登記しなければならないと思っている方がたまにいらっしゃいますが、これも特に必要ありません。
もちろん、レンタカーの事務所を登記簿に載せてたいというのであれば、載せることは全然いいのですが、法律上登記する必要はありません。
つまり、レンタカーの事務所とする住所は、会社の登記簿のどこを探しても載っていないということもあり得るという事です。
さて、レンタカーの事務所は登記されていない住所でも設けることができることは解説したとおりですが、デメリットが1つあります。
それが車庫証明を取得する際の提出書類です。
まず、レンタカー事業を行うためには、許可を取得してから実際にレンタル車両とする車のナンバープレートを変更する必要があります。
先程の例で本店が東京、レンタカー事務所が沖縄にある場合、レンタル車両のナンバープレートの地域名は「沖縄」になり、平仮名表記は「わ」もしくは「れ」になります。
このナンバープレートの変更(新車の場合は新規発行)に必要となるのが、その車を駐車する場所が確保されていることを証明する公的書類である車庫証明です。
この車庫証明は、駐車場がある場所を管轄する警察署が発行するため、当然沖縄県のどこかの警察署に申請することになります。
車庫証明発行の条件として、駐車場の位置が会社の拠点から直線で2㎞以内の場所でなければならないというルールがあります。
ここでレンタカー事務所を登記簿上の本店・支店以外の場所にした弊害が発生します。
車庫証明を申請する際、そのレンタカー事務所が会社の拠点であるということを証明する必要があるのですが、事務所が登記簿に載っている住所であれば登記簿を提出すればそれで拠点としての証明ができます。
しかし、登記簿に載っていない住所を事務所にした場合、そのレンタカー事務所が会社の拠点であるのかという証明ができません。
そこで登記簿の代わりに提出するのが、公共料金の領収書や事務所宛てに届いた郵便物です。
これらの書類には宛名として会社名と住所が載っていますので、この書類の提出をもって会社の拠点である証明とします。
ただし、どんな書類が会社の拠点の証明になるのかは、申請する警察署によって若干取り扱いが異なる場合があるので、事前に問い合わせておくのが確実です。
長くなりましたが、結論レンタカー事務所を登記簿上の本店・支店以外の場所にするデメリットとしては、本来会社の登記簿を提出すれば済むものを、ルールが明確に定まっていない公共料金の領収書や郵便物のような書類で代用しなければならないという点です。
最後に許可を取得してから、レンタカー事業を開始するまでの具体的な手続きについて解説します。
前提として、会社の本店は愛知県名古屋市にある社長の自宅、支店の登記はなし、静岡の伊豆にてレンタカー業を始める場合を想定します。
現在はすでに静岡運輸支局にレンタカーの申請をし許可取得済み、伊豆の駐車場付き事務所を借りて、名古屋にて社用車として使っている車1台を伊豆に持っていき1台からレンタカー事業スタートです。
いまある「名古屋ナンバー」の車を「伊豆のわナンバー」に変更すれば、事業を開始することができます。
まずは、伊豆市を管轄する伊豆中央警察署に車庫証明の申請をします。
車庫証明に必要な書類は次のとおりです。
①~③の書類は様式と記載例を警察署のHPからダウンロードすることもできますし、窓口で貰う事もできます。
申請が完了し、書類に不備が無ければ3~4日ほどで車庫証明が発行されます。
車庫証明が発行されたら、ナンバー変更する車両に乗って、沼津自動車検査登録事務所にてナンバープレートを変更します。
わナンバーに変更するための必要書類は次のとおりです。
③のレンタカー事業者証明書というのは、レンタカーの許可を取得した際に許可証と一緒に発行される書類です。
最低限持っていく書類は以上の3つですが、わナンバーへの変更以外に所有者などの別の項目も変更する場合は必要となる書類が増えますので、事前に陸運局に問い合わせて必要書類を確認することをおすすめします。
陸運局での手続きを終え、無事ナンバー変更が完了したら、晴れてレンタカー事業スタートです。