回送運行許可を取るための条件を解説

相談者様

 

回送運行許可を取るための条件を知りたいのですが?

行政書士

 

回送運行許可の条件は、どの業種で回送を行うかによって異なります。

相談者様

 

どのような業種の種類があるのですか?

行政書士

 

制作、販売、陸送、特定整備の4業種があります。また回送運行は地域によってかなり許可の条件に違いがあります。

 

今回の記事では、回送運行許可の取得条件(ディーラーナンバーの使用条件)について専門の行政書士が解説します。

 

 

許可取得の条件

冒頭の会話でもあるように、回送運行の許可については少し特殊で、他の許認可のように許可の条件が業種や地域によって違いがあります。

 

そのため今回は、地域を中部運輸局管轄(営業所の所在地が愛知県、岐阜県、三重県、静岡県、福井県のいずれか)に設定して解説します。

 

そして許可の条件については、“全業種共通の条件”と“それぞれの業種特有の条件”に分けて解説をします。

 

全業種共通の条件

4つのうち、どの業種で許可を取得するにしても必ず必要となる条件が次の3つです。

 

  1. 営業所があること
  2. 管理責任者がいること
  3. 運転手がいること

 

営業所があること

一つ目の条件は、回送運行を行うにあたって業務の拠点となる営業所があることです。

 

営業所と言っても一般的な事務作業ができる環境であれば良いので、他の事業との兼業事務所や自宅の一室などでも良いでしょう。

 

広さの制限等も特にないようなので、とにかく仕事ができるような建物があれば良いです。
そして先ほども少し触れましたが、この営業所の所在地によって申請先である管轄が決まります。

 

例えば、営業所が名古屋市にあれば名古屋ナンバーになるため、申請先の管轄は愛知運輸支局になりますし、営業所が春日井市にあれば春日井ナンバーになるため、管轄は小牧自動車検査登録事務所になります。

 

管理責任者がいること

二つ目の条件は、回送を行う上での管理責任者がいることです。

 

管理責任者とは何者かというと、国土交通省にて“許可証等の管理を行うほか、回送運行を行う自動車が保安基準に適合していることの確認体制の構築並びに許可証等を使用する者に対する教育、指導及び監督に関する事項を処理する者”という風に定義されています。

 

つまり、回送運行業務を行う上での責任者という事ですね。

 

ただ、実際は回送を行う運転者が管理責任者を兼任しているという実態が多いようですが、一つ注意すべき点があります。

 

その根拠となる規定が、次の条文です。

 

(研 修)
第 15 条 許可を受けた者は、法令等を遵守して回送運行を行うため、運転者等に
対して少なくとも年1回以上法令等の研修、その他必要な事項を実施しなければ
ならない。

 

自動車の回送運行許可等事務取扱要領より引用

 

この第15条に記載がある通り、運転者については年1回以上の研修が義務付けられています。
そしてこの研修は、基本的に管理責任者が講師として行います。

 

管理責任者と運転者が同一だと、講師として運転者に対して研修ができなくなります。
自分で自分を研修することはできませんからね。

 

そのため、このような場合は研修のための講師をしてくれる方を別で用意する必要が発生します。

 

運転者がいること

三つ目の条件は、回送運行を行う運転者がいることです。
これは当然と言えば当然ですね。

 

問題となるのは、“回送運行を行う会社の従業員でなければならないのか”という事です。
実は法律等で明確に申請する会社の従業員でなければならないという規定は見当たりません。

 

しかし、回送運行の許可に関する資料の中に、次のような決まりがあります。

 

(運転者台帳)
第 14 条 許可を受けた陸送を業とする者は、営業所ごとに回送業務従事運転者台
帳(第8号様式)(以下「運転者台帳」という。)を備え付け、これに所定の事項
を記録しなければならない。

 

自動車の回送運行許可等事務取扱要領より引用

 

この規定や先ほど紹介した第15条を見る限り、運転者は明らかに自社の従業員を前提としていることが分かります。

 

それぞれの業種特有の条件

それでは次に、制作、販売、陸送、特定整備の4業種にてそれぞれ許可取得に必要となる条件を解説します。

 

「製作」で許可取得する際の条件

制作による回送とは、自動車メーカーや架装業者が自動車を工場などから回送する場合に取得する許可で、条件は次のとおりです。

 

  • 初めて申請する場合・・・許可申請を行った日から向こう1年間の計画数が7台以上であること。
  • 2回目以降の申請の場合・・・許可申請を行った日の直前1年間の回送運行の許可に基づく回送運行実績が7台以上あること。

 

初めて申請を行う場合については、これから1年間の回送計画を7台以上に設定すればよいので、クリアしなければならない条件は無いと言っても良いでしょう。

 

以前に許可を取得していて、2回目以降の申請(許可の更新)の場合については、申請から1年以内の回送実績が7台以上必要となります。

 

そのため、これからずっと回送運行の許可を更新し続けていく予定の方は、1年の回送実績は7台以上をキープする必要があるという事ですね。

 

「製作」で許可取得する際の条件は以上となります。

 

「販売」で許可取得する際の条件

販売による回送とは、自動車販売業者が販売のために自動車を整備工場や別の店舗へ移動させる場合に取得する許可で、条件は次のとおりです。

 

  • 初めて申請する場合・・・許可申請を行った日の直前1年間の自ら販売した自動車に係る第35条の臨時運行許可に基づく運行実績が7台以上あること
  • 2回目以降の申請の場合・・・許可申請を行った日の直前1年間の回送運行の許可に基づく自ら販売した自動車に係る回送運行実績が7台以上あること。
  • 中古車販売をする場合(初めて・2回目共通)・・・古物商の許可を取得していること。

 

販売に関しては、制作と違い初めての申請の場合においても実際に回送を行ったという実績が必要となります。

 

回送運行の許可を持っていないのにどうやって回送を行うかというと、各市区町村役場にて申請できる「臨時運行許可」という制度を使います。

 

臨時運行許可も、回送運行許可と同じく本来公道を自走できない自動車を一時的に自走できるようにする許可です。

 

回送運行許可と違い、1台ずつ申請をして許可を得る必要があり、ナンバープレートの貸出期間も最大5日と短いのが特徴です。

 

「販売」で許可取得する際は、この臨時運行許可制度を使い1年間で7台以上の回送実績が必要となります。

 

回送運行の許可で一番多い業種がおそらく「販売」だと思いますが、許可取得の条件が一番厳しいのも「販売」と言えます。

 

なお、2回目以降の許可(更新)の場合は、「製作」と条件は同じです。

 

「陸送」で許可取得する際の条件

陸送による回送とは、他人の依頼を受けて回送費をもらって自動車を運ぶ場合に取得する許可で、条件は次のとおりです。

 

  • 初めて申請する場合・・・許可申請を行った日から向こう1年間の計画数が7台以上であること。
  • 2回目以降の申請の場合・・・許可申請を行った日の直前1年間の回送運行の許可に基づく回送運行実績が7台以上あること。
  • (初めて・2回目共通)自動車の陸送業務に従事する運転者が常時1名以上いること。
  • (初めて・2回目共通)回送委託契約書の写しを提出できること、又は一般社団法人日本陸送協会の会員であること。

 

ベースは「製作」と同じで、それに加えて2つの条件が加えられています。
一つ目は、常時1名以上の運転者がいることという条件です。

 

もともと全業種共通の条件にて、運転者が必要という条件があるので、一見こちらの条件は重複しているように感じます。

 

しかしおそらく「陸送」で求められているのは“常時”という部分だと考えられます。
つまり、正社員レベルで常に確保されていなければならないという事でしょう。

 

もちろんこちらについて明確に条文や資料に記載があるわけではないので、100%そうであるとは言い切れませんが、申請実務の経験からそのような意図で定められているのだと思います。

 

二つ目の回送委託契約書の写しを提出できることというのは、申請前に本当に陸送の依頼が発生するのかを確認するための条件でしょう。

 

もちろん許可取得前に実際に陸送を行う事はできないので、許可を取得出来次第という条件付きの契約になるとは思いますが、そのような契約を書面として提出できることが条件という事です。

 

また、回送委託契約書の代わりに一般社団法人日本陸送協会の会員になることで、条件を満たすこともできます。

 

「特定整備」で許可取得する際の条件

特定整備による回送とは自動車の整備会社が、車検で自動車を引き取る際の回送や、車検後の引き渡しの際の回送を行う場合に取得する許可で、条件は次のとおりです。

 

  • 初めて申請する場合・・・許可申請を行った日の直前1年間の自ら販売した自動車に係る第35条の臨時運行許可に基づく運行実績が7台以上あること
  • 2回目以降の申請の場合・・・許可申請を行った日の直前1年間の回送運行の許可に基づく自ら販売した自動車に係る回送運行実績が7台以上あること。

 

基本的には、「販売」の条件と全く同じです。

 

ただし、条件には「離島等のへき地であることその他やむを得ない事情があると認められるときは、実情に応じて判断することとする。」と付け加えられています。

 

そのため、7台の実績に足らない事情がある場合は、考慮の余地が残されていそうです。